準起訴裁判所が、相当な嫌疑のもとに刑訴法二六二条一項に掲げる罪が成立すると判断し公訴提起すべきものとして審判に付した以上、公判審理の結果それ以外の罪の成立が認められるにすぎないことになつたとしても、審判に付された事件と公訴事実の同一性が認められるかぎり、この罪で処罰することができる。
準起訴手続によつて審判に付された事件において刑訴法二六二条一項に掲げる罪以外の罪で処罰することの可否
刑訴法262条1項,刑訴法265条,刑訴法338条4号
判旨
準起訴手続(付審判請求)により公訴提起があったものとみなされた場合、審理の結果、刑法193条から196条以外の罪(暴行罪等)が成立すると認められたときでも、公訴事実の同一性が認められる限り、当該事実を認定し処断することができる。
問題の所在(論点)
準起訴手続(付審判決定)によって開始された公判において、付審判請求の対象となる罪(刑訴法262条1項所定の罪)以外の罪を認定し、有罪判決を下すことができるか。
規範
準起訴裁判(付審判)の制度は、特定の罪につき検察官が不起訴としたことの是正を目的とする検察官起訴独占主義の例外である。しかし、裁判所が相当な嫌疑により審判に付す決定をした以上、その効力は検察官による通常の公訴提起と差異はないと解すべきである。したがって、付審判決定がなされた後は通常の公判手続が適用され、審判に付された罪以外の事実が認定されることになっても、公訴事実の同一性が認められる範囲内であれば、その事実を認定し処断することは許される。
重要事実
被告人は、特別公務員暴行陵虐致傷罪等の訴因により、裁判所の付審判決定に基づき審判に付された。第一審および原審(仙台高裁)での審理の結果、被告人の行為は特別公務員としての職権濫用等にはあたらないが、その基礎となる「暴行罪」の成立は認められると判断された。これに対し、被告人側は、準起訴手続の対象は刑訴法262条1項所定の罪(特別公務員職権濫用罪等)に限定されており、それ以外の罪(暴行罪)で有罪とすることは違法であると主張して上告した。
事件番号: 昭和28(あ)4724 / 裁判年月日: 昭和31年2月10日 / 結論: 棄却
一 特別公務員暴行陵虐の罪について、被告人の所為が、証拠品の任意提出を求める職務執行にあたり行われたという審判に付する決定事実および一審判決の事実認定を、控訴審において緊急逮捕の職務執行にあたり行われたと認定することは、それが証拠に即する限り違法ではない。 二 (裁判官池田克の補足意見) 特別公務員暴行陵虐被告事件の一…
あてはめ
準起訴裁判所が相当な嫌疑のもとに付審判決定をした以上、それは検察官の公訴提起と同様の法的効果を持つ(刑訴法267条)。公判裁判所の事実認定が付審判決定時の判断と異なることは通常の公訴提起でも起こりうることであり、これをもって決定を無効とする理由にはならない。本件において、原判決が認定した暴行罪の事実は、審判に付された特別公務員職権濫用致傷等の事実と公訴事実の同一性が認められる。よって、通常の訴因変更や事実認定のルールに従い、暴行罪を認定して処断することに何ら妨げはない。
結論
付審判決定により審判に付された事件であっても、公訴事実の同一性が認められる範囲内であれば、付審判対象外の罪を認定し処断することが認められる。上告棄却。
実務上の射程
準起訴手続(付審判)の射程を定める重要判例である。答案上は、検察官起訴独占主義の例外としての制度趣旨を論じた上で、付審判後の手続は通常の公判手続と異ならないとする「公訴提起擬制」の効果(267条)を根拠として、公訴事実の同一性(312条1項)の枠内で事実認定が可能であることを指摘する際に用いる。
事件番号: 昭和29(あ)3582 / 裁判年月日: 昭和31年10月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が訴因よりも態様が縮小された事実を認定する場合、被告人の防御権に実質的不利益を及ぼさないため、訴因変更手続を要しない。したがって、傷害罪の訴因に対し、同一性を害しない範囲で暴行罪を認定することは適法である。 第1 事案の概要:被告人は傷害罪(刑法204条)の訴因で起訴され、第一審判決も同罪の…