一 特別公務員暴行陵虐の罪について、被告人の所為が、証拠品の任意提出を求める職務執行にあたり行われたという審判に付する決定事実および一審判決の事実認定を、控訴審において緊急逮捕の職務執行にあたり行われたと認定することは、それが証拠に即する限り違法ではない。 二 (裁判官池田克の補足意見) 特別公務員暴行陵虐被告事件の一審における判決言渡のために開かれた公判期日に、検察官の職務を行う弁護士が出席せず、検察官が出席しても刑訴第四一一条第一号を適用すべき場合にあたらない。
一 特別公務員暴行陵虐被告事件の職務執行の認定につき、審判に付する決定および一審判決認定事実と異る控訴審の事実認定の適法 二 刑訴第四一一条第一号にあたらない一事例 三 ―特別公務員暴行陵虐被告事件の判決言渡期日に検察官が出席した場合―
刑訴法378条3号,刑訴法312条,刑訴法411条1号,刑訴法268条,刑訴法282条2項,刑訴法377条1号,裁判所法11条
判旨
付審判決定に基づき審理される事件において、特定の職務執行の過程で生じた一連の暴行事実が審判対象に含まれている場合、裁判所は、個別の行為がどの職務執行(証拠品の任意提出要求か、緊急逮捕か)に該当するかについて、第一審の判断に拘束されず独自の事実認定を行うことができる。
問題の所在(論点)
付審判決定により審判の対象となった事実の範囲内において、控訴審が第一審の認定した具体的状況(緊急逮捕の決意時期等)と異なる事実を認定することは、付審判制度の趣旨や控訴審の権限に照らして許されるか。
規範
付審判決定により訴訟係属が生じた事件において、決定書に記載された事実の範囲内であれば、証拠に基づいて個別の事実(特定の意図の形成時期や具体的行為の職務上の性質等)を再構成することは、控訴審の独自かつ適法な判断権の範囲に属する。
重要事実
被告人らは、麦束の任意提出を求めるため被害者宅付近に赴いた際、提出を拒絶されたことに立腹し、被害者を蹴り倒した上、身体を持ち上げて運び、連行中に「泥棒」などの暴言を吐いた。付審判決定事実には、農道から自宅に至るまでの一連の所為が包含されていた。第一審は、緊急逮捕の決意時期を「自宅到着後」と認定したが、原審(控訴審)は「農道での任意提出拒絶時」と認定し、第一審と異なる前提で職務執行の適法性を判断したため、被告人側が判断の違法を主張して上告した。
あてはめ
本件では、付審判決定事実の中に、農道から被害者宅に到着するまでの被告人の一連の所為が既に包含されている。このような場合、被告人の行為が「麦束の任意提出を求める職務」として行われたか、あるいは「緊急逮捕の職務」として行われたかの判断、および緊急逮捕の決意がいつどこでなされたかの認定は、証拠に即する限り裁判所の自由な心証に委ねられる。したがって、原審が第一審の認定に拘束されず、独自の判断権に基づき決意時期を農道時点と認定したとしても、決定事実の同一性を損なうものではなく、違法とはいえない。
結論
控訴審が第一審と異なる緊急逮捕の決意時期を認定したとしても、それが決定事実の範囲内である限り、独自の判断権の行使として適法である。
実務上の射程
付審判制度における審判対象の確定に関する判例であり、決定書に記載された事実関係の範囲内であれば、裁判所がその職務上の法的性質や動機を再構成できることを示している。実務上は、訴因変更が制限される付審判手続において、裁判所の事実認定の裁量権を認める根拠として引用し得る。
事件番号: 昭和47(あ)1481 / 裁判年月日: 昭和49年4月1日 / 結論: 棄却
準起訴裁判所が、相当な嫌疑のもとに刑訴法二六二条一項に掲げる罪が成立すると判断し公訴提起すべきものとして審判に付した以上、公判審理の結果それ以外の罪の成立が認められるにすぎないことになつたとしても、審判に付された事件と公訴事実の同一性が認められるかぎり、この罪で処罰することができる。
事件番号: 昭和29(れ)19 / 裁判年月日: 昭和30年12月16日 / 結論: 棄却
一 特別公務員暴行陵虐致死被告事件において、被害者の解剖所見のみを基礎として受傷時と死亡時との時間的間隔を推認し、これにより或る幅をもつた受傷時を推認した上、その推認時間内において被害者と交渉を持つた者のうちから証拠と推理によつて加害者を認定しても差支えなく、理由不備の違法があるとはいえない。 二 証拠と理由不備の違法…