暴行被告事件を第一審において審理するにあたり、要証事実に関する証拠調を終了し、量刑に関する諸般の情状を調査する手続上の段階において、検察官から、被告人に暴行の習癖あることを立証するためなされた証人尋問の請求を許容して、その取調をしても、これを違法であるということはできない。
被告人の悪い性格に関する証拠調をすることの可否。
刑訴法295条,刑訴法296条,刑訴法297条,刑訴法318条,憲法37条1項
判旨
被告人の性格や習癖といった情状に関する証拠調べは、犯罪事実に関する証拠調べが一応終了した段階であれば、量刑の判断に資するものとして許容される。
問題の所在(論点)
犯罪事実に関する証拠調べの段階において、被告人の悪性格や前科・習癖等の情状に関する証拠を調べることは、裁判官に不当な予断を生じさせる訴訟手続上の違法(刑訴法247条、256条6項の趣旨等への抵触)となるか。
規範
我が国の刑事訴訟制度においては、公訴事実(要証事実)に関する立証が尽くされた後の段階において、量刑に関する諸般の情状を調査するための証拠調べを行うことが認められる。被告人の悪性格や暴行の習癖に関する立証であっても、それが犯罪事実の認定のためではなく、専ら量刑のための情状に関するものであれば、その実施を制限すべき理由はない。
重要事実
被告人が被疑者に対して暴行を加えたとされる事件において、第一審裁判所は要証事実に関する証拠調べを一応終了した後、検察官の請求に基づき、被告人に暴行の習癖があることを立証するための証人尋問を実施した。証人らは、過去に被告人から自白を強要され暴行を受けた旨を供述した。これに対し弁護人は、かかる証拠調べは裁判官に予断を抱かせる不公平なものであり、訴訟法に違反すると主張して上告した。
事件番号: 昭和28(あ)4724 / 裁判年月日: 昭和31年2月10日 / 結論: 棄却
一 特別公務員暴行陵虐の罪について、被告人の所為が、証拠品の任意提出を求める職務執行にあたり行われたという審判に付する決定事実および一審判決の事実認定を、控訴審において緊急逮捕の職務執行にあたり行われたと認定することは、それが証拠に即する限り違法ではない。 二 (裁判官池田克の補足意見) 特別公務員暴行陵虐被告事件の一…
あてはめ
第一審の経過によれば、裁判所は当事者双方に要証事実に関する立証を尽くさせた後の第10回公判において、当該証人尋問を「情状に関するもの」として実施している。これは手続上の段階として、量刑に関する調査を行う段階に至っているといえる。本件証人尋問の目的は被告人の暴行習癖の立証にあり、公訴事実そのものの立証ではないため、裁判官が予断や偏見に基づき不公平な裁判を行ったとは認められない。したがって、適法な手続の範囲内であると解される。
結論
本件証人尋問は、要証事実に関する証拠調べ終了後の情状に関する立証として許容され、公判手続に違法はない。
実務上の射程
被告人の性格・経歴等の情状証拠は、実務上、犯罪事実の認定を誤らせる「性格証拠」として排除される可能性があるが、本判例は、事実認定の段階と量刑判断の段階を区別し、後者の段階であれば悪性格に関する立証も許容されることを示している。答案上は、証拠調べの順序や目的を分けることで予断排除原則との調和を図る理屈として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)3219 / 裁判年月日: 昭和28年5月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において、職権で決定した証人を現場で尋問し、その後に当該証人尋問調書を公判期日において証拠調手続に付した上で、被告人に意見陳述の機会を与えた場合には、当該尋問の結果を事実認定の資料とすることは適法である。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件で起訴され、控訴審(原審)において事実の取調べが行わ…
事件番号: 昭和29(れ)19 / 裁判年月日: 昭和30年12月16日 / 結論: 棄却
一 特別公務員暴行陵虐致死被告事件において、被害者の解剖所見のみを基礎として受傷時と死亡時との時間的間隔を推認し、これにより或る幅をもつた受傷時を推認した上、その推認時間内において被害者と交渉を持つた者のうちから証拠と推理によつて加害者を認定しても差支えなく、理由不備の違法があるとはいえない。 二 証拠と理由不備の違法…