判旨
控訴審において、職権で決定した証人を現場で尋問し、その後に当該証人尋問調書を公判期日において証拠調手続に付した上で、被告人に意見陳述の機会を与えた場合には、当該尋問の結果を事実認定の資料とすることは適法である。
問題の所在(論点)
控訴審において裁判所が職権で実施した現場での証人尋問の結果を、判決の基礎となる事実認定の資料に供するための手続的要件が問題となる。
規範
裁判所が職権で証人尋問を決定し、実施した証拠の取調結果を事実認定の資料とするためには、適法な証拠調手続を経ることを要する。具体的には、証人尋問の実施に際して被告人・弁護人に立会いおよび反対尋問の機会を与え、その後に当該尋問調書を公判廷で証拠として取り調べ、当事者に意見陳述や弁論の機会を保障しなければならない。
重要事実
被告人が刑事事件で起訴され、控訴審(原審)において事実の取調べが行われた。原審は職権で証人Aを現場で尋問することを決定し、検察官および弁護人の一任を得て実施した。尋問当日には被告人および弁護人が立ち会い、被告人自ら反対尋問を行った。その後の公判において、当該証人尋問調書が証拠として取り調べられ、被告人は意見を陳述した。さらに当事者双方の弁論および被告人の最終陳述を経て弁論が終結され、原審は当該尋問結果を事実認定の資料として判決を下した。被告人側はこれが違法であるとして上告した。
あてはめ
本件では、第一に、原審が職権により証人尋問を決定し、検察官・弁護人の合意のもと現場尋問を実施している。第二に、尋問手続において被告人および弁護人の立会いと被告人による反対尋問が確保されており、防御権の行使が認められる。第三に、実施後の公判において当該尋問調書の証拠調べが行われ、被告人に意見陳述の機会が与えられている。このように、証拠法則に基づく適法な取調手続と当事者への手続的保障が尽くされているといえる。したがって、当該証拠を事実認定の資料としたことに違法はない。
結論
原審の訴訟手続に違法はなく、当該証人尋問の結果を事実認定の資料とした判断は正当である。本件上告を棄却する。
実務上の射程
控訴審における独自の事実取調べ(刑訴法393条1項)に関する基本判例である。裁判所が職権で証拠調べを行う際にも、伝聞法則や直接主義の観点から、公判廷での証拠調手続(調書の朗読・取調べと意見陳述機会の付与)を厳格に経る必要があることを示している。答案上は、職権証拠調べの適法性を論じる際のプロセスとして活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)3623 / 裁判年月日: 昭和28年5月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において量刑の事情に関する書類を刑訴法393条に基づき事実の取調べとして扱う場合、特に厳格な証拠調べ手続を経る必要はない。 第1 事案の概要:上告人は、原審(控訴審)において3通の書類が量刑の事情に関するものとして提出された際、裁判所が刑訴法393条の事実の取調べを行うにあたり、適切な証拠調…