判旨
裁判所が証人に対し宣誓をさせなかった場合であっても、公判調書において証人が証言拒絶権を有する親族関係にあることや宣誓をさせない旨が明記されていれば、適法な手続が行われたものと推定される。また、刑法72条の加重減軽の順序等の総則規定は、判決書において適用されていることが明らかであれば、必ずしも条文を明示する必要はない。
問題の所在(論点)
1. 証人が被告人の親族である場合に、宣誓をさせずに行った証人尋問手続に違法があるか。2. 判決書において、刑法72条等の総則規定を「法令の適用」として明示する必要があるか。
規範
証人尋問において、刑事訴訟法上の宣誓をさせない事由(親族関係等)がある場合、裁判所は当然にその該当性を取調べたものと解される。公判調書にその旨の記載があれば、証言拒絶権の告知等の付随的手続も適法に行われたものと認めるのが相当である。また、刑法総則の規定(72条等)の適用については、判決の文脈から法律に従っていることが明白であれば、独立して法令の適用として摘示することを要しない。
重要事実
被告人が窃盗罪で起訴された事件において、弁護人は原審の証人尋問手続に瑕疵があると主張した。具体的には、証人Bが被告人の実父であったが、裁判所が証言拒絶権の告知を適切に行ったか、また宣誓をさせなかった根拠が不明確であるという点である。さらに、刑法72条の加重減軽の順序に関する法令の適用の記載が判決書に欠けていることが違法であると主張して上告した。
あてはめ
1. 公判調書によれば、裁判長は証人Bが被告人の実父であることを認め、宣誓をさせない旨を明記している。このことから、前提として証人が証言拒絶権を有する者か否かを取調べ、拒絶権の告知も行われたと推認できる。特に本件では、Bは被告人の利益のために申請された証人であり、自ら進んで供述している。2. 本件の法定刑および加重後の刑期は刑法14条の制限を超えておらず、判決の内容から適法に計算されていることが明らかである。刑法72条のような総則規定は、適用結果が妥当であれば、罪となるべき事実に対する法令の適用として掲示しなくとも違法ではない。
結論
原審の証人尋問手続および判決の法令適用に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
刑事訴訟手続の適法性は公判調書の記載により合理的に推認されるという「手続の適法推定」を示す。また、判決書の記載事項(刑訴法335条1項)において、総則規定の摘示がどの程度厳格に求められるかという実務上の限界を画定したものである。
事件番号: 昭和47(あ)1916 / 裁判年月日: 昭和49年6月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において、証人の尋問に際し被告人に審問の機会を与えなかったとしても、当該証言を事実認定または量刑の資料としていないのであれば、憲法37条2項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は控訴審において、3名の証人(A、B、C)の尋問が行われた際、自身に審問(反対尋問)の機会が与えられなかったと主…