一 公判廷において證據調をした書類を公判調書に記載するは、如何なる書類につき證據調がなされたかを明確にすれば事足るのであつて、必ずしもその書類を一々個別具體的に掲記する必要はない。 二 刑訴應急措置法第一二條第一項は、公判期日において、被告人に對し同條所定の書類の供述者又は作成者を訊問することを請求し得る權利のあることを告知し、又はその權利を行使することを促す義務を裁判所に負擔させたものではない。
一 證據調をした書類を公判調書に記載する方法 二 刑訴應急措置法第一二條第一項の法意
刑訴法60條2項8號,刑訴法60條2項9號,刑訴應急措置法12條1項
判旨
裁判所は、被告人の証人尋問権を保障した刑訴応急措置法12条(現刑訴法321条等に関連)に基づき、被告人に対し証人尋問の請求権があることを告知し、またはその権利行使を促すべき義務を負うものではない。
問題の所在(論点)
裁判所は、被告人に対し、供述録取書等の証拠採用にあたって証人尋問請求権があることを告知し、権利行使を促すべき訴訟法上の義務を負うか。
規範
裁判所は、証人その他の者の供述を録取した書類等を証拠とする際、被告人から供述者の尋問請求があった場合にはその機会を与えなければならないが、被告人に対し、予め当該請求権が存在することを告知し、または権利行使を促すべき義務までは負わない。
重要事実
被告人Aの窃盗事件において、原審は供述録取書(聴取書)を証拠として事実認定に供した。その際、裁判所は被告人に対し、刑訴応急措置法12条に基づく供述者の尋問請求権があることを告知せず、権利行使を促す措置もとらなかった。弁護人は、このような裁判所の不作為は憲法37条2項の趣旨に反し、違法であると主張して上告した。
あてはめ
刑訴応急措置法12条は、被告人の尋問請求権を予想し、請求があった場合に尋問の機会を与えることを証拠能力の要件とした規定である。しかし、法文上、裁判所に告知や権利行使の教示を義務付ける旨の規定は存在しない。被告人が権利を知らない可能性がある場合に告知を行うことは、懇切な訴訟指揮として推奨されるべきではあるが、これを行わなかったとしても直ちに法的な違法が生じるものではない。
結論
裁判所は告知義務を負わないため、告知を行わずに供述書類を証拠とした原判決に違法はない。
実務上の射程
憲法37条2項の証人尋問権および伝聞例外(刑訴法321条等)の運用における裁判所の教示義務を否定した射程を持つ。もっとも、本判決は「推奨されるべき」との付言をしており、適切な訴訟運営の観点からは教示が望ましいことを示唆している。答案上は、手続の適法性を論ずる際の消極的な規範として活用できる。
事件番号: 昭和27(れ)141 / 裁判年月日: 昭和27年11月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】窃盗罪の判示において被害物件が特定されていれば罪となるべき事実の説示として十分であり、被告人が事実を認めて争わず証人尋問の請求もない場合には、裁判所が職権で被害者を召喚し尋問する義務はない。 第1 事案の概要:被告人A、B、Cらは窃盗の罪で起訴され、第一審および控訴審において有罪判決を受けた。弁護…