判旨
控訴審において量刑の事情に関する書類を刑訴法393条に基づき事実の取調べとして扱う場合、特に厳格な証拠調べ手続を経る必要はない。
問題の所在(論点)
控訴審において量刑に関する資料を事実の取調べとして用いる際、刑訴法393条に基づく手続として、第一審と同様の厳格な証拠調べ手続を要するか。
規範
刑事訴訟法393条1項に基づく事実の取調べにおいて、それが量刑の事情に関するものである場合には、第一審における証拠調べのような厳格な証拠調べ手続(刑訴法298条以下等)を必ずしも必要としない。
重要事実
上告人は、原審(控訴審)において3通の書類が量刑の事情に関するものとして提出された際、裁判所が刑訴法393条の事実の取調べを行うにあたり、適切な証拠調べ手続を欠いたことが違法であると主張して上告した。
あてはめ
本件で問題となった3通の書類は「量刑の事情に関するもの」であった。控訴審は事後審的性格を有し、刑訴法393条の事実取調べは判決に影響を及ぼすべき事由の有無を確認するために行われるものである。したがって、量刑判断の基礎となる資料を確認する目的であれば、第一審における犯罪事実の認定のような厳格な証拠調べ手続を経ずとも、その内容を検討することが許容される。
結論
量刑の事情に関する事実の取調べには、特段の証拠調べ手続を必要としない。したがって、原審の手続に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
控訴審における事実取調べ(393条)の方式の柔軟性を認めた射程の長い判例である。特に量刑資料(情状に関する書面等)については、当事者に意見を述べる機会を与える等の配慮は実務上なされるが、刑訴規則2条に基づく証拠調べまでは不要であることを示す際に活用できる。
事件番号: 昭和28(あ)2129 / 裁判年月日: 昭和30年2月15日 / 結論: 棄却
刑訴第三九三条第一項但書(昭和二八年法律第一七二号による改正前のもの)の規定は、第一審判決後に成立した示談書について常に控訴審に対し証拠調の義務を課したものとは解されない。