刑訴第三九三条第一項但書(昭和二八年法律第一七二号による改正前のもの)の規定は、第一審判決後に成立した示談書について常に控訴審に対し証拠調の義務を課したものとは解されない。
刑訴第三九三条第一項但書(昭和二八年法律第一七二号による改正前のもの)と第一審判決後に成立した示談書の証拠調
刑訴法393条1項(昭和28年法律172号による改正前のもの),刑訴法393条1項(昭和28年法律172号による改正後のもの),刑訴法393条2項(昭和28年法律172号による改正後のもの)
判旨
控訴審において、第一審判決後に成立した示談書等の情状に関する証拠について、刑事訴訟法393条1項但書は常に証拠調べの義務を課したものではない。裁判所が当該証拠を取り調べずに判決を言い渡したとしても、直ちに違法とはならない。
問題の所在(論点)
第一審判決後に成立した示談書について、被告人側から証拠調べの請求があった場合、控訴審裁判所は刑事訴訟法393条1項但書に基づき、常にこれを取り調べる義務を負うか。
規範
刑事訴訟法393条1項但書は、控訴審において判決に影響を及ぼすべき事実を調べるために必要がある場合には証拠調べをすべきことを定めているが、第一審判決後に成立した証拠(示談書等)について、常に控訴審に証拠調べの義務を課したものとは解されない。
重要事実
被告人AおよびBの弁護人は、控訴審の第一回公判期日において、第一審判決後に成立した示談書の証拠調べを請求した。しかし、原審(控訴審)はこの請求を却下し、取調べを行わないまま判決を言い渡した。原審は、被告人Aについては第一審の量刑を重すぎると判断して破棄自判し刑を減じた一方、被告人Bについては第一審の量刑は失当ではないと判断した。
あてはめ
本件において、問題となった示談書は第一審判決後に成立したものである。刑事訴訟法393条1項但書の規定は、事後審的性格を有する控訴審において、常に新たな証拠の取調べを強制する趣旨ではない。原審は、示談書を取り調べない段階でも、被告人Aについては量刑不当として刑を減じ、被告人Bについては量刑が妥当であると判断できる程度の心証を得ていたといえる。したがって、当該証拠を取り調べなかったことが判例の趣旨に反するような審理不尽には当たらない。
結論
控訴審は、第一審判決後の示談書について常に証拠調べを行う義務を負うものではなく、これを取り調べずに判決を言い渡した原審の判断に違法はない。
実務上の射程
控訴審における証拠調べの裁量を認めた判例である。答案上は、控訴審の事後審的性格を前提としつつ、393条1項但書の「必要があると認めるとき」の解釈において、新証拠の取調べが義務的ではないことを示す際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和30(あ)4051 / 裁判年月日: 昭和33年2月20日 / 結論: 棄却
一 控訴審が事実の取調をした以上、第一審の無罪判決を破棄して有罪を認定するにあたり、第一審において取り調べた証拠のみを挙示することはなんら違法でない。 二 原判決が全体の趣旨において引用の判例と異る判断をしたものというだけで、そのいかなる部分が引用の判例のいかなる部分と異るのか具体的に明らかでない主張は、上告理由として…