判旨
弁論終結後に提出された情状に関する上申書について、裁判所が判断を示さずに判決を宣告したとしても、訴訟手続上の違法はない。
問題の所在(論点)
弁論終結後かつ控訴趣意書差出期限経過後に提出された上申書について、裁判所が特段の判断を示さないまま判決を宣告することは、刑事訴訟法又は同規則に違反するか。
規範
控訴審において控訴趣意書の差出最終日を経過し、かつ公判期日における弁論が終結した後になされた弁論再開の申請や上申書の提出に対し、裁判所が必ずしも弁論を再開して判断を示す義務を負うものではない。
重要事実
被告人は一審有罪判決後、控訴を申し立てた。原審は控訴趣意書差出最終日を通知し、弁護人は期限内に控訴趣意書を提出した。その後、第1回公判期日で被告人及び国選弁護人が出頭して弁論を行い、審理を終結(結審)して判決宣告期日が指定された。判決宣告の前日に新しく選任された弁護人が弁論再開を申請し、宣告期日に情状に関する上申をしたい旨を述べたため、裁判所は判決を延期した。しかし、その後の宣告期日において、裁判所は弁論再開請求を却下した上で、提出されていた情状に関する上申書について判断を示すことなく判決を宣告した。
あてはめ
本件では、控訴趣意書の差出最終日を既に経過しており、かつ原審の第1回公判において適法に弁論が終結している。弁論終結から1か月以上経過した後に提出された上申書は、法律上の適法な主張期間を徒過した後のものであり、これに対して裁判所が判断を下さなかったとしても、刑事訴訟法上の手続的権利を侵害するものとはいえない。また、判決宣告に至るまで、被告人側から裁判所の措置に対して何ら異議の申立てがなされていなかったという事情も考慮される。
結論
弁論終結後の上申書に対して判断を示さなかったとしても、刑事訴訟法および同規則に照らして何ら違法ではなく、上告理由は認められない。
実務上の射程
適法な控訴趣意書の提出と公判期日での弁論を経て結審した後は、裁判所に弁論を再開する義務はないことを確認するものである。答案上は、弁論終結後の主張や証拠申し出の取り扱いが問題となる場面で、裁判所の裁量を肯定する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和28(あ)2129 / 裁判年月日: 昭和30年2月15日 / 結論: 棄却
刑訴第三九三条第一項但書(昭和二八年法律第一七二号による改正前のもの)の規定は、第一審判決後に成立した示談書について常に控訴審に対し証拠調の義務を課したものとは解されない。