判旨
憲法1条違反の主張が原判決の結論に影響しない場合、刑法上の暴行罪の成立は是認される。被告人による憲法1条ないし8条の無効主張等は、適法な上告理由に当たらない。
問題の所在(論点)
被告人が主張する「憲法1条違反」や「憲法1条ないし8条の無効」という憲法論上の主張が、刑法上の暴行罪の成否を判断した原判決に対する適法な上告理由(刑訴法405条)となり得るか。
規範
憲法違反の主張であっても、それが原判決の結論に影響を及ぼさないことが明らかな場合や、実質的に単なる法令違反・事実誤認の主張に過ぎない場合は、刑訴法405条の上告理由には当たらない。
重要事実
被告人は暴行罪に問われたが、上告に際して天皇の地位を定める憲法1条への違反や、憲法14条(法の下の平等)、37条(刑事被告人の権利)への違反を主張した。さらに、憲法1条から8条までの規定が無効であるとの独自の主張を展開した。
あてはめ
最高裁は、憲法1条違反の主張について、被告人の行為を暴行罪とした第一審判決を是認した原判決の結論に影響がないことが明らかであるとした。また、憲法14条・37条違反の主張は、実質的には単なる法令違反や事実誤認の主張に留まる。さらに、憲法1条ないし8条の無効主張についても、上告理由としての適格性を欠く。したがって、いずれの主張も刑訴法405条所定の事由に該当しない。
結論
本件上告は棄却される。被告人の行為が暴行罪に当たるとした原判決の結論は維持される。
実務上の射程
具体的な犯罪事実(暴行)の成否とは無関係な抽象的な憲法論議や、実質的に事実誤認を争うだけの主張は、上告理由として構成できないことを示す。実務上は、憲法違反を主張する際には当該違反が判決の結論に直結することを示す必要がある。
事件番号: 昭和56(あ)1044 / 裁判年月日: 昭和57年4月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法14条、28条、31条違反の主張が、実質的に事実誤認や単なる法令違反をいうものである場合、刑訴法405条所定の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人らの弁護人が、憲法14条(法の下の平等)、28条(労働基本権)、31条(適正手続の保障)違反を理由として上告を申し立てた事案。しかし、…
事件番号: 昭和26(あ)65 / 裁判年月日: 昭和27年2月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法違反を主張する上告であっても、その実質が刑訴法411条の職権破棄事由の主張にすぎない場合は、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:弁護人が、原判決には憲法違反があるとして上告を申し立てた事案である。しかし、その主張の具体的な内容は、実質的には刑事訴訟法411条が規定する職権破棄事由…