判旨
被告人の悪性を指示するような記載がなく、公務執行妨害罪の構成要件である一連の暴行脅迫の事実を表示した起訴状は、起訴状一本主義に反せず、訴因も特定されていると解される。また、弁護人選任に関する告知手続は憲法37条3項が直接要請するものではない。
問題の所在(論点)
公務執行妨害罪の構成要件に該当する一連の事実を記載した起訴状が、起訴状一本主義(刑訴法256条6項)に違反し、または訴因の特定(同条3項)を欠くか。また、弁護人選任の告知手続は憲法37条3項により要請されるか。
規範
起訴状一本主義(刑訴法256条6項)の趣旨は、裁判官に予断を生じさせないことにある。したがって、起訴状において犯罪の構成要件に該当する具体的事実を記載することは、被告人の悪性を不当に強調するものでない限り適法である。また、訴因の特定(同条3項)は、他の犯罪事実と区別できる程度に特定されていれば足りる。
重要事実
被告人は公務執行妨害罪で起訴された。起訴状には、公務執行中の公務員に対する一連の暴行・脅迫の事実が、一罪の一部として表示されていた。弁護人は、これが被告人の悪性を強調するものであり、起訴状一本主義に違反し、かつ訴因の特定も欠いていると主張して上告した。また、弁護人選任に関する告知手続の欠如についても憲法違反を主張した。
あてはめ
本件起訴状は、公務執行妨害罪の構成要件をなす一連の暴行・脅迫の事実を記載したものであり、これらは犯罪事実そのものである。したがって、裁判官に被告人の悪性を予断させるような不当な記載とは認められず、起訴状一本主義に反しない。また、一連の事実を一罪として表示していることから、他の事実との識別も可能であり、訴因も特定されている。弁護人選任告知については、憲法の要請ではなく、本件では実際に私選弁護人が選任され期限内に書面を提出しているため、権利侵害もない。
結論
本件起訴状は起訴状一本主義に反せず、訴因も特定されており適法である。また、弁護人選任の告知手続の欠如も憲法違反には当たらない。
実務上の射程
起訴状に構成要件的事実を詳述することが予断排除原則に抵触するかどうかの境界線を示す。実務上は、余事記載(前科や素行など)と構成要件的事実を区別する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和29(あ)1106 / 裁判年月日: 昭和31年4月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公務執行妨害罪の成立には公務の適法性が求められるところ、執行の根拠となる裁判が一部矛盾を含んでいても、なお執行可能な部分が存在し、その範囲内で行われる公務を妨害した場合には同罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人らは、福岡地方裁判所飯塚支部の仮処分決定(昭和26年(ヨ)第2号および第27号)に基…