判旨
公務執行妨害罪の成立には公務の適法性が求められるところ、執行の根拠となる裁判が一部矛盾を含んでいても、なお執行可能な部分が存在し、その範囲内で行われる公務を妨害した場合には同罪が成立する。
問題の所在(論点)
内容が矛盾する複数の裁判(仮処分決定)に基づき行われる職務執行について、公務執行妨害罪の前提となる公務の適法性が認められるか。
規範
公務執行妨害罪(刑法95条1項)が成立するためには、当該公務員が行う職務が「適法」であることを要する。もっとも、公務の適法性は、客観的な法令上の要件を具備しているか否かによって決せられるべきであり、職務の根拠となる裁判等の内容に一部矛盾や瑕疵があっても、客観的に執行可能な範囲が存する限り、その範囲内での職務執行は適法な公務として保護される。
重要事実
被告人らは、福岡地方裁判所飯塚支部の仮処分決定(昭和26年(ヨ)第2号および第27号)に基づく執行官の職務執行を脅迫によって阻止したとして、公務執行妨害罪で起訴された。弁護側は、当該仮処分決定の内容に矛盾があり、執行が不能である旨を主張した。
あてはめ
本件における二つの仮処分決定謄本を比較すると、両者の間には矛盾しない部分が存在していた。そうであるならば、少なくともその矛盾しない部分については、裁判の趣旨に沿った適法な執行が可能であったと解される。被告人らは、この執行可能な範囲内における執行官の職務を脅迫によって阻止したものであるから、公務の適法性を欠くものとはいえず、公務執行妨害罪の構成要件を充足する。
結論
被告人の所為は、なお執行可能な範囲における適法な職務を妨害したものとして、公務執行妨害罪が成立する。
実務上の射程
公務の適法性に関する論点において、一部に瑕疵や矛盾がある処分に基づく執行がなされた事案で引用できる。処分の全体が無効でない限り、執行可能な範囲が特定できれば適法性を肯定できるという論理で活用すべきである。
事件番号: 昭和28(あ)4001 / 裁判年月日: 昭和29年12月14日 / 結論: 棄却
勾留状記載の罪名と起訴状記載の罪名とが異つていても、両者に記載されている犯罪事実に同一性があると認められる以上、勾留は違法でない。