仮りに公務執行妨害罪が成立しないものとしても、暴行罪の成立することは明らかであり、右暴行罪のみとしても原審の量刑は著しく正義に反するものとは言えないから、刑訴四一一条を適用して原判決を破棄すべきものとは認められない。
刑訴法第四一一条にあたらない一事例(公務執行妨害罪と暴行罪)
刑法95条,刑法208条,刑訴法411条
判旨
公務執行妨害罪の成否において、職務執行の適法性が否定され同罪が成立しない場合であっても、暴行の事実が認められる限りは暴行罪が成立し得る。
問題の所在(論点)
職務執行の適法性に疑義があり公務執行妨害罪が成立しない可能性がある場合において、当該公務員に対する暴行行為について暴行罪を成立させることができるか。
規範
公務執行妨害罪(刑法95条1項)が成立するためには、前提となる公務員の職務執行が「適法」であることを要する。もっとも、令状呈示の手続的瑕疵等により当該職務執行の適法性が否定され、同罪が成立しない場合であっても、公務員の身体に対する不法な有形力の行使が認められる限り、刑法208条の暴行罪の成立を妨げない。
重要事実
被告人両名は、接収財産の引渡業務に従事していた公務員に対し、暴行を加えた。弁護人は、本件において引渡令書が交付・呈示されていない以上、当該公務は適法な職務執行とはいえず、公務執行妨害罪は成立しないと主張して上告した。原判決が確定した事実関係によれば、被告人側から令状の呈示を求めた事実は認められなかった。
あてはめ
本件において、仮に弁護人が主張するように引渡令書の不呈示という手続的瑕疵が存在し、職務執行の適法性が欠けるために公務執行妨害罪が成立しないと仮定しても、被告人らが公務員に対して暴行を加えた事実は揺るがない。暴行罪は「適法な公務」であることを要件とせず、不法な有形力の行使があれば成立する。したがって、適法な公務遂行中か否かに関わらず、暴行の事実がある以上、暴行罪の成立は明らかである。
結論
公務執行妨害罪が成立しない場合であっても、暴行罪の成立は認められる。本件各上告を棄却する。
実務上の射程
公務執行妨害罪における「職務の適法性」が争点となる事案において、予備的訴因や減縮された認定として暴行罪(または傷害罪)の成否を検討する際の根拠となる。職務執行が違法であっても、直ちに公務員に対するあらゆる暴行が正当化されるわけではないことを示す。
事件番号: 昭和26(あ)3096 / 裁判年月日: 昭和28年3月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】警察官が上司の命を受け、現行犯人を適法に逮捕しようとした際に、これを阻止する目的で暴行を加えた場合、公務執行妨害罪が成立する。 第1 事案の概要:福岡市警察局勤務の巡査Aは、上司の命を受け、Bを公務執行妨害の現行犯として適法に逮捕しようとしていた。被告人は、この逮捕を阻止しようと考え、持っていた旗…