原判決の認定した事実によると、警察官らは、所論小料理店「A」の二階に立入る直前に、その一階において、「A」に寝泊まりしていた被疑者Bに逮捕状を示して、これを適法に逮捕していたというのであるから、「A」の二階に立入り、差押、捜索または検証をすることが適法にできたものといわなければならない〔刑訴法第二二〇条第一項〕。
刑訴法第二二〇第一項による捜索等が適法に行なわれたものと認められた事例。
刑訴法220条1項
判旨
逮捕状による逮捕の際、その現場において、令状なしに差押え、捜索または検証をすることは刑訴法220条1項2号に基づき適法である。したがって、これを行う警察官に対して暴行・脅迫を加える行為は公務執行妨害罪(刑法95条1項)を構成する。
問題の所在(論点)
警察官が建物の1階で被疑者を逮捕した直後に、同建物の2階に令状なく立ち入る行為が、刑訴法220条1項2号にいう「逮捕の現場」における捜索等として適法か。また、これに抵抗する暴行・脅迫が公務執行妨害罪を構成するか。
規範
刑法95条1項の公務執行妨害罪が成立するためには、当該公務員の職務執行が「適法」であることを要する。刑事訴訟法220条1項2号に基づき、検察官、検察事務官または司法警察職員は、被疑者を逮捕する場合において必要があるときは、逮捕の現場で令状なくして捜索、差押え、または検証を行うことができる。この権限に基づく行為は、逮捕という適法な職務執行に付随する一連の行為として、適法な公務の執行にあたる。
重要事実
警察官らは、建物「A」に寝泊まりしていた被疑者Bに対し、建物の1階において適法に逮捕状を示して逮捕した。その後、警察官らは同建物「A」の2階に立ち入ろうとしたところ、被告人らから暴行・脅迫を受けた。被告人らは、この2階への立ち入りを伴う捜査の適法性を争い、公務執行妨害罪の成立を否定して上告した。
あてはめ
本件では、警察官らは建物1階において被疑者Bを逮捕状に基づき適法に逮捕している。この逮捕の直後に、同一建物内である2階に立ち入って差押え、捜索または検証を行うことは、刑訴法220条1項2号が認める「逮捕の現場」における処分として許容される。したがって、警察官らが2階に立ち入ろうとした行為は、適法な公務の執行であるといえる。これに対し被告人らが暴行・脅迫を加えたことは、適法な職務の執行を妨害したものと解される。
結論
警察官による2階への立ち入りは適法であり、これに対する被告人らの暴行・脅迫には公務執行妨害罪が成立する。
実務上の射程
本判決は、刑訴法220条1項に基づく無令状捜索等の適法性を前提に、公務執行妨害罪の成否を肯定したものである。答案上は、逮捕に伴う無令状処分の「場所的範囲(逮捕の現場)」の解釈として、同一建物内であれば場所的関連性が認められ、適法な公務執行になり得ることを示す際に活用できる。
事件番号: 昭和28(あ)4001 / 裁判年月日: 昭和29年12月14日 / 結論: 棄却
勾留状記載の罪名と起訴状記載の罪名とが異つていても、両者に記載されている犯罪事実に同一性があると認められる以上、勾留は違法でない。