判旨
労働組合員による組合活動であっても、その手段が暴行を伴うなど社会通念上許容される限界を超える場合は、当然に違法性が阻却されるものではない。また、争議行為を禁止する規定自体の違憲性は、当該暴力的な行為の違法性判断を左右しない。
問題の所在(論点)
勤務時間内の職場集会への参加を強制するために行われた暴行・公務執行妨害行為について、国家公務員法による争議行為禁止の違憲性を理由に正当な組合活動として違法性が阻却されるか。
規範
労働組合による行為が正当な組合活動として違法性を阻却されるためには、その行為自体が社会通念上許容される限界内にあることを要する。暴力的な手段に及ぶ行為は、その活動目的や根拠規定の合憲性を問わず、正当な範囲を逸脱し違法である。
重要事実
国家公務員である被告人らは、勤務時間内職場集会への参加を拒否し続ける同僚Aを強制的に参加させるため、Aの四肢を分担して抱え持ち、仰向けの状態にして約25メートル先まで運び出すという暴行を加え、職務執行を妨害した。被告人らは、国家公務員法による争議行為の禁止が憲法28条に違反し、当該行為は正当な組合活動であると主張した。
あてはめ
被告人らの行為は、嫌がるAを背後から抱えて立ち上がらせ、さらに複数人で手足を持って運び出すという具体的な暴行を伴うものである。このような行為は、目的の如何を問わず「社会通念上許容される限界」を明らかに超えている。したがって、前提となる国家公務員法98条5項(争議行為の禁止)の合憲性や、当該職場集会の禁止の適否といった憲法上の論点を判断するまでもなく、本件行為の違法性は明白である。
結論
被告人らの行為は正当な組合活動とは認められず、違法性は阻却されない。したがって、公務執行妨害罪等の成立を認めた原判決は妥当である。
実務上の射程
労働基本権が制限されている公務員の事案であっても、物理的な強制力を行使する「暴力的な争議行為」については、争議権制限の合憲性議論を待たずに正当性を否定できることを示した判例。答案では、組合活動の正当性の限界を論じる際、手段の妥当性の考慮要素として活用する。
事件番号: 昭和35(あ)2860 / 裁判年月日: 昭和37年1月23日 / 結論: 棄却
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