判旨
公共企業体等労働関係法17条に違反する争議行為自体を有罪とするのではなく、社会通念に照らし正常を逸する争議行為により鉄道営業法に基づく退去権限を行使する職員に暴行・脅迫を加えた場合、公務執行妨害罪が成立する。
問題の所在(論点)
公共企業体等の職員による争議行為が法令により禁止されている場合、その争議行為に関連して行われた暴行・脅迫等の行為について、刑法95条1項の公務執行妨害罪が成立するか。
規範
憲法28条が保障する労働基本権も無制限ではなく、社会通念に照らして正常を逸する争議行為は違法性を有する。また、労働関係法規により禁止された争議行為であっても、その行為自体を直ちに刑罰の対象とするのではなく、当該争議行為に伴う具体的態様(暴行・脅迫等)が公務員の正当な職務執行を妨害した場合には、公務執行妨害罪の成立を認めるべきである。
重要事実
被告人らは、公共企業体等労働関係法17条に違反する争議行為を行っていた。鉄道公安職員が、鉄道営業法に基づき社会通念上正常を逸する争議行為を行っていた被告人らを退去させようとした際、被告人らはこれに対して暴行・脅迫を加えてその職務の執行を妨害した。
あてはめ
本件における被告人らの争議行為は、社会通念に照らし正常を逸するものであり違法と判断される。これに対し、鉄道公安職員が鉄道営業法に基づき退去を求めた行為は、適法な職務の執行に該当する。被告人らがこの職員に対して暴行・脅迫を加えた事実は、適法な職務執行を妨害するものといえるため、公務執行妨害罪の構成要件を充足し、その違法性も阻却されない。
結論
被告人らの行為には公務執行妨害罪が成立する。
実務上の射程
公務員の争議行為に対する刑事罰の適否については変遷があるが(全逓東京中郵事件判決等)、本判決は争議行為の態様が「社会通念上正常を逸する」場合において、その実力行使に対する公務執行妨害罪の成立を肯定する枠組みを示しており、正当な業務行為の限界を画する実務上の指針となる。
事件番号: 昭和35(あ)720 / 裁判年月日: 昭和37年9月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公共企業体等の職員による争議行為が法律で禁止されている場合、その一環として行われたピケッティングであっても、公務員に対し暴行を加えたときは公務執行妨害罪が成立する。 第1 事案の概要:日本国有鉄道(当時)の労働組合員である被告人らは、助勤車掌の出務を阻止するためにピケットラインを形成した。鉄道公安…
事件番号: 昭和46(あ)1257 / 裁判年月日: 昭和50年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公共企業体等労働関係法17条1項に違反する争議行為であっても、直ちに正当性が否定されるわけではなく、労働組合法1条2項の刑事免責の適用があり得る。ただし、組織統制力の行使として許容される限界を超える有形力の行使を伴う場合は、違法不当なものとして刑事免責の対象とならない。 第1 事案の概要:郵政職員…