原判決の憲法解釈の当否が原判決の結論に影響するものでないことがその判示自体において明らかであるとして、違憲の主張が不適法とされた事例―いわゆる大阪中郵事件―
判旨
公共企業体等労働関係法17条1項に違反する争議行為であっても、直ちに正当性が否定されるわけではなく、労働組合法1条2項の刑事免責の適用があり得る。ただし、組織統制力の行使として許容される限界を超える有形力の行使を伴う場合は、違法不当なものとして刑事免責の対象とならない。
問題の所在(論点)
公労法17条1項により争議行為を禁じられている郵政職員の行為について、労働組合法1条2項の刑事免責が適用されるか。また、有形力の行使を伴う争議行為に正当性が認められるか。
規範
公共企業体等の職員による争議行為を禁止する規定(公労法17条1項)がある場合であっても、当該争議行為に労働組合法1条2項の刑事免責規定の適用は排除されない。しかし、刑事免責を受けるためには、その行為が争議行為として正当な範囲内にあることが必要であり、具体的には「組織統制力の行使として許容される限界」を超えないものであることが求められる。有形力の行使を伴うなど、正当な手段・態様を逸脱する行為については、同条項の適用はない。
重要事実
郵政職員である被告人らが、公労法17条1項によって争議行為が一律に禁止されているにもかかわらず、争議行為(本件ではストライキ等に伴う行動と推認される)を実施した。その際、被告人らは組織統制力の行使という名目の下で、一定の有形力を行使するに至った。第1審および原審は、公労法違反の争議行為であっても刑事免責の余地は認めつつも、本件の有形力行使についてはその限界を超えているとして有罪と判断したため、被告人側が憲法28条違反等を理由に上告した。
あてはめ
原判決の認定によれば、公労法17条1項違反の争議行為に対しても労組法1条2項の適用があるという立場を前提としている。しかし、本件各被告人が行った所為は、組織統制力の行使として許容される限界を超える程度の「有形力の行使」を伴うものであった。このような態様による争議行為は、正当な労働運動の範囲を逸脱した違法不当なものといわざるをえず、刑事免責の要件を充足しない。したがって、公労法の争議行為禁止規定の合憲性を論ずるまでもなく、本件行為が罰せられることは正当である。
事件番号: 昭和41(あ)1510 / 裁判年月日: 昭和43年3月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公共企業体等労働関係法17条1項に違反してなされた争議行為であっても、労働組合法1条2項の適用は排除されないが、暴力の行使を伴う行為は正当性の限界を越えるため刑事免責の対象とならない。 第1 事案の概要:被告人らは、公共企業体等労働関係法17条1項の規定に違反して争議行為を行った。その際、被告人ら…
結論
本件上告を棄却する。公労法違反の争議行為であっても刑事免責の適用はあり得るが、有形力の行使を伴うなど正当な範囲を逸脱する場合は、刑事罰を免れない。
実務上の射程
全農林警職法事件判決(最大判昭48.4.25)以降、公務員の争議行為禁止は原則として全面的に合憲とされる流れにあるが、本判決はそれ以前の「正当な争議行為であれば刑事免責を認める」という枠組み(全逓東京中郵事件の流れ)を残した原審の判断を、具体的な有形力行使の点を捉えて維持したものである。現在の司法試験答案上では、争議行為の正当性の限界(特に有形力行使の適否)を論じる際の考慮要素として、手段の相当性を判断する材料に活用できる。
事件番号: 昭和51(あ)947 / 裁判年月日: 昭和53年6月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公共企業体等労働関係法17条1項による争議行為の禁止規定は、憲法28条に違反しない。公務員や公共企業体職員の労働基本権に対する制限は、公共の福祉による合理的な制約として認められる。 第1 事案の概要:日本国有鉄道(当時)の職員であった被告人らが、争議行為(ストライキ等)を主導・実行した。これに対し…
事件番号: 昭和45(あ)2199 / 裁判年月日: 昭和53年3月3日 / 結論: 破棄自判
公共企業体等労働関係法一七条一項違反の争議行為として行われた本件威力業務妨害及び不退去行為は、刑法上の違法性を欠くものではない。