一 税務署長の税務行政処分に不服な納税者等の有志をもつて組織されたA同盟の同盟員等と共同して右税務署の署長、直税課長、庶務課長等に対し、納税者に有利な処分を求むるため交渉することは、憲法第二八条により保障された団結権ないし団体交渉権にもとずくものとはいえない。 二 判決において訴訟費用は被告人等の連帯負担とする旨言い渡しただけでその訴訟費用の額を明示しないからといつてその判決は検事に対し訴訟費用に関する実質的な裁判をすることを許したものではない。
一 納税者の有志で組織したA同盟員と共同して税務署長等に対し納税者に有利な処分を為すべきことを交渉する行為と憲法第二八条 二 被告人に訴訟費用の負担を命じるその額を明示しない判決と憲法第三一条第三二条
憲法28条,憲法31条,憲法32条,刑法95条,旧刑訴法237条,旧刑訴法245条
判旨
憲法28条が保障する団結権・団体行動権は、使用者に対する経済的弱者である勤労者の権利を保護する趣旨であり、その立場に基づかない大衆運動としての公務員への脅迫行為は、同条による保護を受けず、正当な行為として違法性が阻却されることもない。
問題の所在(論点)
使用者対被用者という労働関係にない者による大衆運動・団体行動が、憲法28条の保障する団結権・団体行動権の行使として正当化され、公務員に対する脅迫行為の違法性が阻却されるか。
規範
憲法28条は、使用者対被用者の関係において経済的弱者である勤労者のために団結権・団体行動権を保障したものである。したがって、勤労者としての立場に基づかない行動については同条の保障は及ばず、公務員に対する脅迫等の犯罪行為が社会通念上当然に違法性を欠く、あるいは刑法35条の正当行為として違法性を阻却されることはない。
重要事実
被告人らは共同して、税務署長および3名の税務署職員に対し、特定の言動をもって脅迫行為に及んだ。被告人らは、この行為が憲法28条に基づく団体行動権の行使であり、大衆運動として正当な行為であるから、公務執行妨害罪(刑法95条)等の違法性が阻却されると主張して上告した。
あてはめ
本件における被告人らの行動は、勤労者としての立場に基づくものではないことが原判決により確定している。被告人らが税務署職員らに対して行った脅迫行為は、刑法95条所定の要件に該当し、かつ被告人らにはその犯意も認められる。このような行為は、経済的弱者保護という憲法28条の趣旨に照らして正当な団体行動とはいえず、社会通念上違法性を欠く根拠も、刑法35条により違法性が阻却されるべき根拠も存在しない。
結論
被告人らの所為は憲法28条の保障の範囲外であり、正当な行為とは認められないため、公務執行妨害罪等の成立を認めた原判決に憲法違反や違法性阻却事由の判断遺脱はない。
実務上の射程
憲法28条の労働基本権の主体を「労働関係における勤労者」に限定し、政治的・社会的運動一般には同条の保障が直接及ばないことを示した。公務執行妨害罪の成否において、政治的運動等の文脈で正当行為(刑法35条)を主張する場合の限界を画定する基準として機能する。
事件番号: 昭和51(あ)949 / 裁判年月日: 昭和52年8月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働者による争議行為等の態様が暴行・脅迫を伴うものであれば、公務執行妨害罪の適用を免れず、これを罰することは憲法14条や28条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人両名は、労働運動の過程において何らかの行為(詳細は判決文からは不明)に及び、公務執行妨害罪に問われた。弁護側は、当該行為に同罪を適用…