官公庁の労働争議で派生した暴力事犯に公務執行罪を適用するのは、憲法一四条、二八条に反するとの主張を欠前提で処理した事例
憲法14条,憲法28条,刑法95条
判旨
労働者による争議行為等の態様が暴行・脅迫を伴うものであれば、公務執行妨害罪の適用を免れず、これを罰することは憲法14条や28条に違反しない。
問題の所在(論点)
労働者の行為に対して公務執行妨害罪を適用することが、憲法14条(法の下の平等)および憲法28条(労働基本権)に抵触し、違憲となるか。
規範
労働組合法上の正当な争議行為等であれば刑法35条の正当業務行為として違法性が阻却され得るが、公務員に対し暴行又は脅迫を加える態様の行為は、特段の事情がない限り正当性の範囲を逸脱し、公務執行妨害罪(刑法95条1項)が成立する。この適用は法の下の平等(憲法14条)や労働基本権(憲法28条)を侵害するものではない。
重要事実
被告人両名は、労働運動の過程において何らかの行為(詳細は判決文からは不明)に及び、公務執行妨害罪に問われた。弁護側は、当該行為に同罪を適用することは、使用者と労働者を差別し、使用者の対抗措置を不当に保護するものであり、憲法14条及び28条に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件における被告人らの行為に公務執行妨害罪を適用したとしても、それが使用者と労働者を不当に差別的に取り扱うものとは認められない。また、使用者の労働者に対する対抗措置を特に手厚く保護するものともいえない。したがって、労働基本権の行使としての外形を備えていても、公務員に対する妨害行為として構成要件に該当する以上、憲法上の権利を根拠に免責されるべき前提を欠いている。
結論
被告人らの行為に公務執行妨害罪を適用することは合憲であり、上告は棄却される。
実務上の射程
労働事件における刑事責任の限界を示す。労働運動の一環であっても、公務員に対する有形力の行使がある場合には、直ちに「正当な行為」として免責されるわけではなく、公務執行妨害罪の成立を肯定する実務上の運用を追認したものである。
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一 税務署長の税務行政処分に不服な納税者等の有志をもつて組織されたA同盟の同盟員等と共同して右税務署の署長、直税課長、庶務課長等に対し、納税者に有利な処分を求むるため交渉することは、憲法第二八条により保障された団結権ないし団体交渉権にもとずくものとはいえない。 二 判決において訴訟費用は被告人等の連帯負担とする旨言い渡…
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