一 被告人等はいずれも昭和二二年度所得税更正決定に不正があると主張し納税民主化同盟及びその友誼団体に属する大衆を指導してその威力によりその主張を貫徹しようと企て、判示第一及び第二の如き脅迫行為に出でたというにあるから、その団体行動が憲法二八条の保障する団体行動権に基ずくものに該当しないこと多言を要しない。 二 刑法第九五条第二項にいわゆる「公務員の処分」とはその公務員の職務に関係ある処分であればたり、その職務権限内の処分であると否とを問わない。
一 憲法第二八条にいわゆる「団体行動をする権利」の行使に該当しない一事例 二 刑法第九五条第二項にいわゆる「公務員の処分」の意義
刑法95条,憲法28条
判旨
憲法28条が保障する団体行動権は、経済的弱者である労働者が使用者に対し労働条件の維持改善等を目的として行うものに限定され、所得税更正への抗議等を目的とする大衆行動には適用されない。また、公務員職務強要罪(刑法95条2項)にいう「公務員の処分」には、職務上の地位の安全を保護する観点から、職務権限外の事項も含まれる。
問題の所在(論点)
1. 納税の更正決定に対する抗議活動として多衆の威力を用いた行動が、憲法28条の団体行動権として正当化されるか。 2. 刑法95条2項の「公務員の処分」に、公務員の職務権限外の事項が含まれるか。
規範
1. 憲法28条の団体行動権は、使用者に対する労働条件の維持改善や地位向上を目的とする範囲内で保障されるものであり、それ以外の目的を有する団体等の集合に対しては保障されない。 2. 刑法95条2項の「公務員の処分」とは、当該公務員の職務に関係ある処分であれば足り、職務権限内の処分であるか権限外の処分であるかを問わない。同条は、正当な職務執行のみならず、職務上の地位の安全をも広く保護する趣旨だからである。
重要事実
被告人らは、所得税の更正決定に不正があるとして納税民主化同盟等の大衆を指導し、岐阜税務署長および関税務署長に対し、多衆の威力を示して面談を要求した。その際、暴言や怒号、身体への危害を予感させる挙動等の脅迫を用いて、税法違反の是正等の要求事項を承認させ、協定書等に署名捺印させた。第一審は強要罪等を適用したが、原審は刑法95条2項(公務員職務強要罪)を適用して処罰した。
あてはめ
1. 本件被告人らの行動は、所得税更正決定への不満を背景に大衆の威力により主張を貫徹しようとしたものであり、使用者に対する労働条件の維持改善を目的とする「勤労者」の団体行動には該当しない。したがって、憲法28条による保障の範囲外であり、処罰は憲法に違反しない。 2. 被告人らが強要した要求事項(承認や署名捺印)は、税務署長の職務権限外の事項であっても、税務署長という職務上の地位に関連して行われたものである。同条は職務上の地位の安全を保護するものであるから、「公務員の処分」に該当し、同条2項が適用される。
結論
被告人らの行為は憲法28条の保障対象外であり、また、要求内容が職務権限外であっても刑法95条2項の「公務員の処分」に含まれるため、同罪が成立する。
実務上の射程
憲法28条の保障範囲を「労働条件の維持改善」という目的に限定したリーディングケースであり、政治的活動や納税抗議活動への適用を否定する際に引用される。刑法上は、職務強要罪の保護法益を職務の執行のみならず「地位の安全」にまで広げ、処分の概念を広範に捉える解釈として、公務員に対する不当な要求事案における検討の指針となる。
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