判旨
公務執行妨害罪の成否に関し、税務調査官による職務の執行が適法である限り、これに対する妨害行為は同罪を構成する。また、捜査や公訴提起に不当な意図が認められない以上、適正手続に反するものとはいえない。
問題の所在(論点)
1.税務調査官による職務執行が適法な公務といえるか。2.不当な意図に基づく捜査・公訴提起が憲法31条に違反するか。
規範
公務執行妨害罪(刑法95条1項)における「職務を執行するに当たり」とは、当該公務員の職務執行が法律上の権限に基づき、かつ有効な手続を履践していることを要する(職務の適法性)。また、憲法31条に基づく適正手続の観点から、捜査および公訴提起が不当な意図や差別的な目的をもって行われた場合には違法となり得るが、その認定には客観的な証跡を要する。
重要事実
被告人らは、大蔵事務官(税務調査官)による税務調査の執行に際し、これに抵抗または妨害する行為に及んだとして公務執行妨害罪に問われた。被告人側は、当該税務調査が調査権の濫用であり正当な公務ではないこと、また、本件の捜査および公訴提起が特定の政治的意図や不当な目的によってなされたものであり憲法31条等に違反することを主張して上告した。
あてはめ
1.原判決および第一審判決が認定した事実によれば、大蔵事務官A、B、C、Dの各職務執行は、法律の規定に則り、適正な手続の範囲内で行われたものであり、適法であると認められる。したがって、税務調査権の濫用にはあたらず、正当な公務の執行と評価される。2.記録に照らしても、捜査機関や検察官が特定の不当な意図をもって捜査や公訴提起を行ったと認めるに足りる客観的な証跡は存在しない。ゆえに、適正手続に反する事情は認められない。
結論
本件各職務の執行は適法であり、捜査・公訴提起の手続も憲法に違反しないため、公務執行妨害罪の成立を肯定した原判断は正当である。
実務上の射程
公務執行妨害罪における「職務の適法性」の判断において、具体的状況下での公務員の行為が権限内であれば適法性が認められることを示す。また、公訴権濫用論を示唆する主張に対し、証跡がない限り違憲・違法とはならないとする実務上の立証の重要性を強調する際に参照すべき判例である。
事件番号: 昭和27(あ)2966 / 裁判年月日: 昭和28年10月2日 / 結論: 棄却
刑法第九五条は公務員を特別に保護する規定ではなく、公務員によつて執行される公務を保護するものである。
事件番号: 昭和24(れ)1953 / 裁判年月日: 昭和25年1月24日 / 結論: 棄却
被告人Aは同人の居宅を訪れ屋内を捜索中の米子税務署勤務大藏事務官B同税務署雇Cに對し、捜索に來た税務官吏であることは推察しながら、右Cの腕をつかんで同家の土間に引つぱり下したり、B事務官が木桶に封印するのを邪魔しようとしたりして、暴力を加えその圓滿な職務の執行を妨げたというのである。右のCは所論のように單獨だつたのでは…
事件番号: 昭和25(れ)1325 / 裁判年月日: 昭和27年3月28日 / 結論: 棄却
一 所得税に関する調査等をする職務を有する収税官吏が、所得税法第六三条により帳簿書類等の検査をするにあたつて、法定の検査章を携帯していなかつたとしても、納税義務者等において右検査章の不携帯を理由として右収税官吏の検査を拒んだような事実のない以上、これに対して暴行又は脅迫を加えたときは公務執行妨害罪を構成する。 二 収税…