刑法第九五条は公務員を特別に保護する規定ではなく、公務員によつて執行される公務を保護するものである。
公務執行妨害罪の保護法益
刑法95条,憲法14条
判旨
刑法95条1項の公務執行妨害罪は、公務員個人を特別に保護するものではなく、公務員によって執行される公務そのものを保護するものである。したがって、同条の規定は憲法14条の法の下の平等に反するものではない。
問題の所在(論点)
刑法95条1項(公務執行妨害罪)が公務員を不当に優遇し、憲法14条(法の下の平等)に違反しないか。同条の保護法益をいかに解すべきか。
規範
刑法95条1項の保護法益は、公務員という特定の身分を有する個人に対する身体の安全や自由ではなく、公務員によって適法に執行される「公務そのもの」の円滑な遂行である。
重要事実
被告人が公務員(金沢税務署調査課の大蔵事務官)による臨検捜索差押えの職務執行に際し、暴行または脅迫を加えたとして公務執行妨害罪に問われた事案。弁護人は、公務員を一般人と比較して特別に保護する刑法95条の規定は、憲法14条の平等原則に違反し無効であると主張して上告した。
あてはめ
事件番号: 昭和26(れ)242 / 裁判年月日: 昭和26年9月27日 / 結論: 棄却
濁酒の醸造量はその仕込原料よりも減少することが経験則に合致する。
刑法95条は公務員個人の保護を目的とするものではない。その本質は、国家または公共団体の活動である公務そのものの適正な執行を確保することにある。このように、保護の対象が「個人」ではなく「公務の機能」にある以上、公務員という属性に着目して一般人と差別しているという批判は当たらない。したがって、同条が特定の身分を不当に優遇しているとの前提は誤りである。
結論
刑法95条は憲法14条に違反しない。したがって、適法な職務執行中の公務員に対して暴行を加えた行為に同条を適用することは正当である。
実務上の射程
公務執行妨害罪の保護法益が「公務そのもの」であることを明示した基本判例である。答案上は、職務の適法性の判断基準や、公務員個人に対する暴行罪との罪数関係を論じる際の基礎となる視点である。また、公務員という身分に基づく差別が争点となる憲法問題への対応としても有用である。
事件番号: 昭和30(あ)625 / 裁判年月日: 昭和32年2月12日 / 結論: 棄却
所論は、本件につき適用された刑法九五条一項は憲法一四条に違反し無効であると主張する。しかし刑法九五条は、刑法第五章の公務の執行を妨害する罪として公務員によつて執行される公務を保護する趣旨の規定であつて、公務員を特別に保護する趣旨を含むものではない。従つてもつぱら個人を保護するために定められたことの明らかな所論の刑法二二…
事件番号: 昭和25(あ)2065 / 裁判年月日: 昭和26年9月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本決定は、被告人の上告について、刑事訴訟法405条の上告理由に該当せず、かつ同法411条を適用して職権で判決を破棄すべき事由も認められないとして、上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:被告人が原判決(下級審の有罪判決等)を不服として上告を申し立てた事案。弁護人が提出した上告趣意書に基づき、…
事件番号: 昭和25(れ)1325 / 裁判年月日: 昭和27年3月28日 / 結論: 棄却
一 所得税に関する調査等をする職務を有する収税官吏が、所得税法第六三条により帳簿書類等の検査をするにあたつて、法定の検査章を携帯していなかつたとしても、納税義務者等において右検査章の不携帯を理由として右収税官吏の検査を拒んだような事実のない以上、これに対して暴行又は脅迫を加えたときは公務執行妨害罪を構成する。 二 収税…