判旨
起訴前に刑事訴訟法227条に基づき証人尋問を行った裁判官が当該被告事件の審判に関与することは、同法上の除斥原因に当たらず、憲法37条1項の定める「公平な裁判所」による裁判の保障にも反しない。
問題の所在(論点)
起訴前に刑訴法227条に基づく証人尋問を行った裁判官が、その後の本案審判に関与することは、憲法37条1項の「公平な裁判所」による裁判を受ける権利を侵害するか。また、刑訴法上の除斥事由に当たるか。
規範
1. 刑事訴訟法20条各号に掲げられる除斥事由は限定列挙であり、同法227条に基づく起訴前の証人尋問に関与したことはこれに含まれない。2. 憲法37条1項の「公平な裁判所」とは、偏頗の疑いを生じさせる客観的事状がない裁判所を指すが、単に予備手続として証人尋問を行った事実のみでは、直ちに裁判官が予断を抱き不公正な裁判をすると断定することはできない。
重要事実
被告人Aらは、共謀の上でB及びCに対し暴行・脅迫を加え、金員を強取したとして強盗罪等で起訴された。本件の第一審裁判官は、公判請求が行われる前の段階において、検察官の請求に基づき刑訴法227条に従って証人尋問を行っていた。弁護人は、当該裁判官が既に予断と偏見を抱いているため、審判に関与することは公平な裁判を保障した憲法37条1項に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件では、記録上、裁判官が刑訴法227条により証人尋問を行った事実は認められる。しかし、当該手続に関与した裁判官は法的に除斥されるものではない。また、被告人及び弁護人から裁判官忌避の申立てがなされた形跡もなく、むしろ当該証人尋問調書を証拠とすることに同意さえしている。このような状況下では、予備的な証人尋問に関与したという一事をもって、裁判の公平性が失われる客観的事態があるとはいえず、憲法37条1項違反の評価は当たらない。
結論
起訴前の証人尋問に関与した裁判官が審判に加わっても、刑訴法に違反せず、憲法37条1項の「公平な裁判所」による裁判としての適格も失われない。
実務上の射程
裁判官の除斥(刑訴法20条)の限定列挙性を確認する際、あるいは憲法上の「公平な裁判所」の意義を論じる際の否定例として活用できる。特に、裁判官が公判前に証拠収集に関与したことが直ちに予断排除原則や公平性を害するわけではないことを示す射程を有する。
事件番号: 昭和27(あ)3505 / 裁判年月日: 昭和28年12月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項は裁判所に被告人側の申請した証人の全てを取り調べる義務を課すものではなく、裁判所が必要と認めて採用した証人についてのみ喚問権を保障するものである。また、同条1項の「公平な裁判所」とは、裁判所の構成等において不公平の恐れのない裁判所を指す。 第1 事案の概要:被告人A、B、Cは共謀の上…