所論共犯Aに対する第一回公判期日前の証人尋問調書は、本件第一審裁判所の裁判官が刑訴二二七条の規定による検察官の請求に基き自ら証人尋問をなした上作成されたものであること所論のとおりであるところ、同条による証人尋問をした裁判官は当該被告事件の審判から除斥されるものではないことは当裁判所の判例(昭和二九年(あ)第一三九六号、同三〇年三月二五日第二小法廷判決、集九巻三号五一九頁参照)とするところであり、又右証人尋問により右裁判官が被告人に対する公判審理の開始前に被告事件の内容に関し予め知識を有していたからといつて、所論の如く予断に基いて不公平な裁判をなしたものと速断することはできない
一 刑訴法第二二七条による裁判官の証人尋問と除斥原因 二 刑訴法第二二七条により証人尋問をした裁判官による裁判と公平な裁判所の裁判
刑訴法227条,刑訴法20条,憲法37条1項
判旨
刑事訴訟法227条に基づき、公判期日前に証人尋問を行った裁判官が、同一被告事件の審理に関与することは許容される。予断排除の原則に反して不公平な裁判をなすものと速断することはできず、除斥の原因にも当たらない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法227条に基づく証人尋問を行った裁判官が、同一事件の審理に関与することが、除斥原因に該当するか、あるいは予断排除の原則に抵触し公平な裁判を妨げるか。
規範
刑事訴訟法227条の規定による検察官の請求に基づき、公判期日前に証人尋問をなした裁判官は、当該被告事件の審判から除斥されるものではない。また、当該裁判官が公判開始前に事件内容に関する知識を予め有していたとしても、直ちに予断に基づいて不公平な裁判をなすものとは解されない。
重要事実
被告人の共犯者Aに対し、第一審の裁判官が、検察官の請求に基づき刑事訴訟法227条(証人尋問の請求)による証人尋問を公判期日前に行った。その後、同一の裁判官が当該被告事件の審理を担当した。弁護人は、これが憲法37条1項の保障する公平な裁判所の原則に違反し、予断に基づく不公平な裁判であると主張して上告した。
あてはめ
刑事訴訟法227条の証人尋問は裁判官が自ら行うものであるが、その性質上、直ちに裁判の公平性を失わせるものではない。本件においても、裁判官が公判審理の開始前に事件の内容について知識を有することになった事実は認められるが、その一事をもって不公平な裁判がなされたと速断することはできない。したがって、法が定める除斥原因(刑訴法20条各号)には該当せず、憲法上の要請にも反しないと評価される。
結論
本件裁判官は除斥されず、その審理関与は適法である。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
裁判官が起訴前に証拠保全(刑訴法179条)や証人尋問請求(同226条、227条)に関与した場合であっても、刑訴法20条7号の「前審の裁判に関与した」場合には当たらないとする判例理論(最判昭29.9.17等)を再確認するもの。答案上は、予断排除の原則(刑訴法256条6項参照)との関係で、制度上の例外として位置づける。
事件番号: 昭和28(あ)2392 / 裁判年月日: 昭和28年10月6日 / 結論: 棄却
共同被告人として起訴された共犯者らと被告人との弁論が分離された結果、判決裁判所の裁判官が、右共犯者らの公判審理により、被告人に対する公判審理の開始前に被告事件の内容に関し、予め知識を有していたからといつて、その裁判官のした審理判決が憲法第三七条第一項にいわゆる「公平な裁判所の裁判」でないということはできない。