右A判事が本件第一審の裁判に関与した判事であつたことはすべて所論のとおりである。然らば右A判事は前審関与として当然原審において本件の審理につき職務の執行から除斥せらるべきものであるから、同判事を構成員として開かれた右原審第八回公判手続が違法であることは勿論、右公判調書における証人の供述記載を事実認定の資料に供することも亦違法であるといわねばならない。
前審関与の裁判官が構成員に加わつた裁判所の公判調書と証拠能力
旧刑訴法24条8号,旧刑訴法411条,旧刑訴法336条,旧刑訴法360条1項
判旨
第一審の裁判に関与した裁判官が、同一事件の控訴審において職務を執行することは除斥事由に該当し、当該裁判官が関与して行われた公判手続および証拠採用は違法である。
問題の所在(論点)
第一審の裁判に関与した裁判官が、同一事件の控訴審(原審)において職務を執行することが除斥事由に該当するか。また、その裁判官が関与した公判における証言を事実認定の資料とすることの可否が問題となる。
規範
裁判官が当該事件につき「前審の裁判」に関与したときは、裁判の公正を確保し、予断を排除する観点から、当然に職務の執行から除斥される(刑事訴訟法20条7号参照)。除斥事由のある裁判官が構成員として関与した公判手続、およびそこで作成された公判調書を事実認定の資料に供することは、訴訟手続の法令違反となる。
重要事実
被告人の犯罪事実を認定するにあたり、原審(控訴審)は第8回公判調書における証人Bの供述を証拠とした。しかし、当該公判を開いた裁判所の構成員である判事Aは、本件の第一審裁判に関与した裁判官であった。弁護人は、この前審関与が除斥事由に該当し、原判決には違法があると主張して上告した。
事件番号: 昭和37(あ)1628 / 裁判年月日: 昭和41年7月20日 / 結論: 破棄差戻
ある裁判官が第一審裁判官としてその公判期日に証拠(判文参照)の取調をなし、該証拠が第一審判決の罪となるべき事実の認定の用に供されているときは、その裁判官は、刑訴法第二〇条第七号にいう前審の「裁判の基礎となつた取調に関与した」者としてその事件の控訴審における職務の執行から除斥される。
あてはめ
判事Aは本件第一審の裁判に関与していたことから、控訴審における「前審関与」に該当する。したがって、同判事は刑事訴訟法上の除斥事由に基づき、原審における職務執行から当然に排除されるべきであった。それにもかかわらず、同判事を構成員として行われた第8回公判手続は違法であり、その手続内で得られた証人の供述記載(公判調書)を事実認定の資料として採用することも、適正な手続によるものとはいえず違法であると評価される。
結論
除斥事由のある裁判官が関与した原審の手続は違法であり、その証拠に基づき事実認定を行った原判決には破棄事由がある。原判決を破棄し、本件を東京高等裁判所に差し戻す。
実務上の射程
裁判官の除斥(刑訴法20条)に関する基本判例である。前審関与の禁止は、裁判の公正の外観を維持するための強行規定であり、これに違反した場合は絶対的控訴理由(400条)や上告理由となり得る。答案上は、裁判の構成が適法か、証拠能力の前提となる手続が適正かを論じる際に引用すべき射程を持つ。
事件番号: 昭和26(あ)1325 / 裁判年月日: 昭和28年2月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】逮捕状を発付した裁判官がその被告事件の第一審判決に関与しても、憲法37条1項に違反せず、刑事訴訟法20条各号の除斥事由にも該当しない。 第1 事案の概要:本件被告人に対し、簡易裁判所裁判官として逮捕状を発付した裁判官が、その後、地方裁判所判事として同一被告事件の第一審の審理および判決に関与した。弁…