控訴審において第一審判決を破棄差戻する旨の判決の審理判決に関与した裁判官が、その事件の再度の控訴審の審理判決に関与しても、刑訴法第二〇条第七号の除斥事由に当らないことは当裁判所の判例(昭和二七年(あ)第五九号同二八年五月七日第一小法廷決定、刑集七巻五号九四六頁昭和三六年(あ)第一七五六号同年一〇月三一日第三小法廷決定、裁判集一三九号八〇七頁)とするところである。
刑訴法第二〇条第七号にいう前審の裁判に関与したときにあたらない事例。
刑訴法20条7号
判旨
控訴審において第一審判決を破棄差戻しする旨の判決に関与した裁判官が、その後の差戻し後の控訴審の審理・判決に関与したとしても、刑事訴訟法20条7号の除斥事由には当たらない。
問題の所在(論点)
差戻し前の控訴審に関与した裁判官が、差戻し後の控訴審の審理・判決に関与することが、刑事訴訟法20条7号の「前審の裁判に関与したとき」に該当するか、また憲法37条1項(公平な裁判所の保障)に違反するか。
規範
刑事訴訟法20条7号が規定する「裁判官が事件について前審の裁判に関与したとき」とは、裁判の連鎖関係において、その前の段階の裁判に関与した場合を指す。したがって、同一の審級においてなされた過去の裁判に関与した事実は、同号の除斥事由には含まれない。
重要事実
被告人の控訴事件において、高橋英明裁判官は当初の控訴審(第1次控訴審)に関与し、第一審判決を破棄し差し戻す旨の判決に関わった。その後、差し戻し後の第一審を経て、再び提起された控訴審(第2次控訴審)において、同一の裁判官が再度その審理および判決に関与した。弁護人は、これが公平な裁判所の構成を害し、憲法37条1項および刑訴法20条7号に違反すると主張して上告した。
あてはめ
刑事訴訟法20条7号は、予断を排除し裁判の公正を期するため、下級審の裁判に関与した裁判官がその上訴審に関与することを禁じている。本件において高橋裁判官が関与したのは、いずれも控訴審という同一の審級における裁判であり、第1次控訴審の判決は第2次控訴審から見て「前審」には当たらない。したがって、同一裁判官が再度の控訴審に関与したとしても、除斥事由のない裁判官が適法に職務を遂行したにすぎず、憲法37条1項が保障する「公正な裁判所」の要請にも反しないと解される。
結論
差戻し前の控訴審に関与した裁判官が、差戻し後の控訴審に関与しても、刑事訴訟法20条7号の除斥事由には当たらず、憲法37条1項にも違反しない。上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、刑訴法20条7号の「前審」の意味を厳格に審級関係で捉える立場を維持している。司法試験においては、除斥・回避の論点で「前審」の意義が問われた際、差戻し前後の関係や再審と本訴の関係など、審級の連鎖がない場合には除斥に当たらないとする規範の根拠として用いる。
事件番号: 昭和26(れ)57 / 裁判年月日: 昭和26年5月25日 / 結論: 破棄差戻
右A判事が本件第一審の裁判に関与した判事であつたことはすべて所論のとおりである。然らば右A判事は前審関与として当然原審において本件の審理につき職務の執行から除斥せらるべきものであるから、同判事を構成員として開かれた右原審第八回公判手続が違法であることは勿論、右公判調書における証人の供述記載を事実認定の資料に供することも…
事件番号: 昭和37(あ)1628 / 裁判年月日: 昭和41年7月20日 / 結論: 破棄差戻
ある裁判官が第一審裁判官としてその公判期日に証拠(判文参照)の取調をなし、該証拠が第一審判決の罪となるべき事実の認定の用に供されているときは、その裁判官は、刑訴法第二〇条第七号にいう前審の「裁判の基礎となつた取調に関与した」者としてその事件の控訴審における職務の執行から除斥される。