控訴審において第一審判決を破棄差戻する旨の判決に関与した裁判官は、その事件の最後の控訴審の審判に関与しても除斥されない。
刑訴第二〇条第七号にいわゆる前審の裁判に関与したときにあたらない事例
刑訴法20条7号
判旨
刑事訴訟法20条7号にいう「前審の裁判」とは、その裁判の内容が後の裁判の基礎となる場合を指し、差戻前の控訴審判決に関与した裁判官が差戻後の控訴審に関与することは、同条の除斥事由に当たらない。
問題の所在(論点)
差戻前の控訴審判決に関与した裁判官が、その後の差戻後の控訴審の審判に関与することは、刑事訴訟法20条7号に定める除斥事由(前審の裁判への関与)に該当するか。
規範
刑事訴訟法20条7号の除斥事由である「裁判官が事件について前審の裁判に関与したとき」とは、上訴により、上級審が下級審の裁判の当否を審査する場合において、その審査の対象となる裁判に関与した場合を指す。したがって、同一審級における差戻前の判決は「前審」には含まれず、同一裁判官が再度の審理に関与しても、法文上当然には除斥されない。
重要事実
本件の控訴審判決に関与した裁判長判事は、本件が一度最高裁から差し戻される前の控訴審(差戻前控訴審)において、差戻判決を下した際の裁判官と同一人物であった。被告人側は、このような裁判官の関与は刑事訴訟法20条7号の除斥事由に該当し、憲法違反または違法であると主張して上告した。
あてはめ
刑事訴訟法20条7号の趣旨は、裁判の公正を確保し、予断を排除することにある。しかし、本件において当該裁判官が関与したのは「差戻前の控訴審」であり、これは「差戻後の控訴審」と同一の審級における手続に過ぎない。前審とは、上訴制度における上下の関係を前提とする概念であるから、同一審級内の前後の手続はこれに含まれない。したがって、本件裁判官の関与は同条7号の法文上、除斥事由に該当しないことは明白である。
結論
差戻前の控訴審判決に関与した裁判官が、差戻後の控訴審に関与しても刑事訴訟法20条7号の除斥事由には当たらない。
実務上の射程
除斥事由の「前審」の範囲を限定的に解する重要判例。答案上では、差戻後の審判や再審における旧判決の関与が問題となった際、本判決の論理を援用して「前審」の意義(上訴関係の有無)を画定するために用いる。なお、予断排除の観点から忌避(21条)の適否は別途検討の余地がある点に注意を要する。
事件番号: 昭和27(あ)2448 / 裁判年月日: 昭和29年6月23日 / 結論: 棄却
控訴審が事実の取調の後第一審判決を破棄して差し戻す旨判決し、差し戻し後の第一審判決が右控訴審の事実取調としてなした証人尋問の結果を犯罪事実認定とした場合の再度の控訴審において、前の控訴審の事実の取調に関与した裁判官が審判に関与しても「前審の裁判の基礎となつた取調に関与したとき」にあたらない。