判旨
第一審の裁判に関与した裁判官が控訴審の公判に関与しても、それが公判期日の延期手続のみに止まり事件の審理に実質的に関与していない場合には、刑事訴訟法20条7号の除斥事由に当たらない。
問題の所在(論点)
第一審の裁判に関与した裁判官が、控訴審において公判期日の延期手続のみを行った場合、刑事訴訟法20条7号(前審関与による除斥)に抵触するか。また、これにより憲法37条1項が保障する「公平な裁判所の裁判」を受ける権利を侵害するか。
規範
刑事訴訟法20条7号にいう「裁判官が事件について前審の裁判...に関与したとき」とは、裁判官が当該事件の審理に実質的に関与した場合を指す。したがって、形式的に公判に関与したとしても、事件の審理に実質的に関わらない手続(公判期日の延期など)に従事したに過ぎない場合は、同号の除斥事由には該当しない。
重要事実
被告人Aの第一審において、冒頭から判決言渡しまで終始関与した判事Bが、その後、第二審(控訴審)の第4回公判に構成員として関与した。しかし、当該公判において、Bは被告人が出頭しなかったため弁護人の申請に基づき公判期日の延期を決定し閉廷したに過ぎず、事件の実質的な審理は行わなかった。Bはその後の第二審の公判には一切関与しておらず、第二審判決は別の裁判官構成によって言い渡された。
あてはめ
判事Bが第二審の構成員として関与したのは第4回公判のみであり、その内容は被告人不在による期日延期の決定に限定されている。同条項の趣旨が、前審で予断を抱いた裁判官を排除して裁判の公正を確保する点にあることに照らせば、本件のように何ら事件の審理を行わず、実質的に関与していない場合には、同号が定める除斥事由には当たらない。また、その後の審理は適法な構成により適正に進行しており、不公平な裁判をするおそれも認められないため、憲法違反の前提を欠くといえる。
結論
本件判事の関与は実質的審理を伴わないため刑事訴訟法20条7号に反せず、憲法37条1項にも違反しない。上告棄却。
実務上の射程
裁判官の除斥事由に関する解釈指針として重要。特に「前審関与」の射程を「実質的な審理への関与」に限定した点で、実務上の公判運営における柔軟性を認める基準となる。答案上は、除斥・回避の論点において、形式的な関与ではなく予断が生じる実質的関与の有無を検討する際の根拠として用いる。
事件番号: 昭和27(あ)635 / 裁判年月日: 昭和28年7月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一回公判期日前の勾留に関する処分に関与した裁判官が、後の本案審理・判決に関与することは、刑事訴訟法20条所定の除斥事由に該当せず、憲法37条1項の公平な裁判所による裁判に反しない。 第1 事案の概要:被告人の刑事事件において、第一回公判期日前に行われた勾留に関する処分を担当した裁判官が、その後の…
事件番号: 昭和29(あ)4169 / 裁判年月日: 昭和31年12月21日 / 結論: 棄却
第一審裁判官が所論仮処分決定をなした裁判官であるということは、同裁判官を被告人に対する本被告事件審判の職務の執行から除斥するものでないことは、刑訴二〇条各号の規定により明らかであると共に、右の一事を以て同裁判官が不公平な裁判をする虞があつたとも断定することはできない。