宇治山田簡易裁判所裁判官Aが逮捕状並びに勾留状を発しながら本件第一審の審理判決をしたことは所論のとおりであるが、そのために同裁判官が職務から除斥されることがないことは勿論忌避の理由があるものとも認められない。
除斥又は忌避の理由の認められない一事例
刑訴法20条,刑訴法21条,刑訴法280条,刑訴規則187条
判旨
裁判官が同一の被告人に対する逮捕状および勾留状を発付した場合であっても、当該裁判官が刑事訴訟法20条各号所定の除斥事由に該当することはなく、またそれのみをもって直ちに忌避すべき理由があるとも認められない。
問題の所在(論点)
裁判官が予断を抱くおそれのある令状発付等の職務を行った後に、同一事件の審理・判決に関与することが、刑事訴訟法上の除斥事由(法20条)や忌避事由(法21条)に該当し、公平な裁判を阻害するか。
規範
刑事訴訟法20条各号に掲げられる除斥事由は限定的に解釈されるべきであり、裁判官が公判前に行う令状発付等の職務執行は、同条7号の「事件について前審の裁判に関与した」場合には当たらない。また、令状発付の事実は、客観的に裁判の公平を妨げるおそれがある事情(法21条)にも直ちには該当しない。
重要事実
被告人の刑事事件において、第一審の審理および判決を担当した裁判官が、当該事件の公判前手続において被告人に対する逮捕状および勾留状を発付していた。弁護人は、このような裁判官が審理に関与することは憲法37条(公平な裁判所の保障)に反し、不法な審理手続であるとして上告した。
あてはめ
本件において、第一審裁判官が逮捕状および勾留状を発付したことは事実であるが、これらは刑事訴訟法20条が定める除斥事由のいずれにも該当しない。令状発付は「前審の裁判に関与した」ことにも当たらないため、職務から除斥されることはない。また、令状発付の職務を行ったという一事をもって、当該裁判官に不公平な裁判をする疑いがあるとは認められないため、忌避事由があるともいえない。したがって、審理手続に憲法違反や不法はない。
結論
令状を発付した裁判官が本案の審理・判決に関与しても、除斥事由には該当せず、また当然に忌避事由があるとも認められない。したがって、本件第一審の審理判決は適法である。
実務上の射程
刑事訴訟法20条7号の「前審」の意義について、公判段階より前の令状発付業務は含まれないことを明確にした判例である。答案上では、裁判の公平性を維持するための除斥制度の適用範囲を限定的に捉える際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)1325 / 裁判年月日: 昭和28年2月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】逮捕状を発付した裁判官がその被告事件の第一審判決に関与しても、憲法37条1項に違反せず、刑事訴訟法20条各号の除斥事由にも該当しない。 第1 事案の概要:本件被告人に対し、簡易裁判所裁判官として逮捕状を発付した裁判官が、その後、地方裁判所判事として同一被告事件の第一審の審理および判決に関与した。弁…