一 上告趣意第一點については、上告人は原審において控訴趣旨として主張しなかつたところであつて原判決は何ら判斷を加えていないのである從つて、この點に關する主張は上告の理由として許されない。 二 被告事件の起訴後第一回公判期日までの間に被告人の保釋に關する決定をした簡易裁判所判事がその事件につき第一審の審理判決をしたとしても憲法第三七條第一項に違反するものでないことについては、當裁判所が判決において示すところである(昭和二四年新(れ)第一〇四號昭和二五年四月一二大法廷判決)。
一 控訴趣意として主張せず、原判決も判斷していない事由と上告の理由 二 起訴後第一回公判期日前に保釋に關する決定を判事がその事件につき審判した場合と憲法第三七條第一項
刑訴法392條1項,刑訴法405條,刑訴法280條,憲法37條1項,刑訴規則187條
判旨
被告事件の起訴後第一回公判期日までにおいて被告人の保釈に関する決定をした裁判官が、当該事件の第一審の審理判決に関与したとしても、憲法37条1項が定める公平な裁判所の要件に違反しない。
問題の所在(論点)
起訴後第一回公判期日までの間に保釈決定を行った裁判官が、当該事件の第一審の審理および判決に関与することが、憲法37条1項の「公平な裁判所」による裁判を受ける権利を侵害するか。
規範
憲法37条1項の「公平な裁判所」とは、偏頗の疑いがない裁判所を意味する。もっとも、裁判官が予断を抱くおそれがある手続に関与したとしても、それが直ちに公平性を失わせるものではない。刑事訴訟法が定める除斥事由(同法20条)等の趣旨に鑑み、裁判の公正を疑わせる客観的事情が認められない限り、憲法違反とはならない。
重要事実
被告人が起訴された後、第一回公判期日が開始されるまでの間に、簡易裁判所の裁判官が当該被告人の保釈に関する決定を行った。その後、同一の裁判官が当該事件の第一審において審理を担当し、判決を言い渡した。弁護人は、保釈の判断に関与した裁判官が本案判決を行うことは、憲法37条1項に違反すると主張して上告した。
あてはめ
保釈に関する判断は、証拠隠滅や逃亡の恐れ等の付随的事実を確認するものであり、本案の有罪・無罪を確定させる予断を直ちに生じさせるものではない。本件において、第一回公判期日前に保釈決定を行った裁判官が、その後の第一審判決に関与したとしても、それだけで裁判の公平性が失われる客観的事情があるとは認められない。刑事訴訟法20条が定める除斥事由にも本件のような事由は含まれておらず、公平な裁判所による審理を妨げるものとはいえない。
結論
被告事件の起訴後、保釈に関する決定をした裁判官が第一審の審理判決をしても、憲法37条1項に違反しない。
実務上の射程
裁判官の除斥・忌避に関する憲法判断の基準を示す。裁判官が本案前に手続的な決定に関与したとしても、それが刑訴法20条各号に掲げられた「前審裁判」等の厳格な除斥事由に該当しない限り、公平な裁判所としての適格性は否定されない。実務上は、保釈判断に関与した裁判官が本案を担当することを許容する射程を持つ。
事件番号: 昭和26(あ)3773 / 裁判年月日: 昭和27年4月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留に関する処分をした裁判官が、同一事件の審判に関与することは、憲法37条1項の定める公平な裁判所の要請に違反しない。 第1 事案の概要:被告人の上告趣意において、勾留に関する処分をした裁判官が当該事件の審判に関与したことが、公平な裁判を受ける権利を保障した憲法37条1項に違反する旨が主張された事…