判旨
勾留に関する処分をした裁判官が、同一事件の審判に関与することは、憲法37条1項の定める公平な裁判所の要請に違反しない。
問題の所在(論点)
勾留に関する処分に関与した裁判官が、その後に当該事件の審判に関与することが、憲法37条1項の「公平な裁判所」の原則に反し、裁判官の除斥・忌避事由あるいは裁判手続の違憲無効を構成するか。
規範
勾留に関する処分等の予断を生じさせるおそれのある職務に携わった裁判官が審判に関与したとしても、直ちに憲法37条1項が保障する「公平な裁判所」による裁判を受ける権利を侵害するものではない。
重要事実
被告人の上告趣意において、勾留に関する処分をした裁判官が当該事件の審判に関与したことが、公平な裁判を受ける権利を保障した憲法37条1項に違反する旨が主張された事案である。
あてはめ
最高裁判所は、過去の判例(昭和27年2月15日判決等)を引用し、勾留という裁判確定前の身体拘束に関する判断を行った裁判官であっても、その後に本案の審理に関与することは憲法上の「公平な裁判所」の概念に抵触しないと判断した。判決文からは詳細なあてはめのプロセスは示されていないが、勾留の判断は証拠能力や有罪の断定とは異なる次元の処分であるとの前提に立つものと解される。
結論
勾留に関する処分をした裁判官が事件の審判に関与しても憲法37条1項に違反しないため、本件上告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟法20条各号に掲げられる除斥事由は限定列挙であり、勾留等の捜査段階の裁判に関与したことは「前審の裁判」に含まれないとする実務上の解釈を憲法的側面から追認するものである。答案上では、裁判官の公平性や予断排除原則が問題となる場面で、除斥事由の限定性を基礎付ける判例として引用できる。
事件番号: 昭和26(あ)175 / 裁判年月日: 昭和27年7月15日 / 結論: 棄却
宇治山田簡易裁判所裁判官Aが逮捕状並びに勾留状を発しながら本件第一審の審理判決をしたことは所論のとおりであるが、そのために同裁判官が職務から除斥されることがないことは勿論忌避の理由があるものとも認められない。