共同被告人を分離して証人として尋問しても不利益な供述を強要したものとはいえない。
共同被告人を分離して証人として尋問することは不利益な供述の強要にあたるか
憲法38条1項,刑訴法143条
判旨
憲法37条1項にいう公平な裁判所とは、その組織および構成において偏頗のおそれのない裁判所を指す。また、共同被告人を分離して証人として尋問することは、自己に不利益な供述を拒絶し得る以上、憲法38条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 逮捕状の発付や勾留に関与した裁判官が、同一事件の審判に携わることは憲法37条1項に違反するか(公平な裁判所の意義)。 2. 共同被告人を手続分離した上で証人尋問することは、憲法38条1項に違反するか。
規範
1. 憲法37条1項の「公平な裁判所」とは、主観的な裁判官の意向を指すのではなく、裁判所の組織および構成という客観的な側面において、不偏不党の立場を損なうような偏頗(へんぱ)のおそれがない状態を指す。 2. 共同被告人を分離して証人として尋問する場合であっても、当該証人は自己に不利益な供述を拒み得る権利(憲法38条1項)が保障されているため、供述の強制には当たらない。
重要事実
被告人らは共謀等の罪に問われた事案において、第一審の裁判官が逮捕状の発付や起訴前の勾留に関する処分に関与していたことから、憲法37条1項の「公平な裁判所」による裁判ではないと主張した。また、公判において共同被告人を分離して証人として尋問した手続につき、供述の強制を禁じた憲法38条1項に違反するとして上告した。
あてはめ
1. 憲法37条1項が求める「公平」とは、裁判所の組織・構成の客観的公正さを意味する。先行する令状事務等は予断を生じさせる余地はあるものの、それ自体が組織・構成としての偏頗性を直ちに結論付けるものではない。 2. 共同被告人を分離して証人の地位に立たせたとしても、証人には証言拒絶権が認められており、自己に不利益な供述を物理的・精神的に強制されるわけではないから、黙秘権の侵害という前提を欠く。
結論
1. 逮捕状発付等に関与した裁判官が審判に従事しても、憲法37条1項には違反しない。 2. 共同被告人を分離して証人尋問することは、憲法38条1項に違反しない。
実務上の射程
裁判官の除斥・忌避(刑訴法20条等)の憲法的根拠を解釈する際の基礎となる判例である。また、共犯者の証人尋問手続において、被告人と証人の地位を分離する運用の合憲性を支える規範として機能する。ただし、証人としての尋問には宣誓義務と偽証罪の制裁が伴うため、被告人本人の黙秘権との調整が実務上の焦点となる。
事件番号: 昭和26(あ)1325 / 裁判年月日: 昭和28年2月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】逮捕状を発付した裁判官がその被告事件の第一審判決に関与しても、憲法37条1項に違反せず、刑事訴訟法20条各号の除斥事由にも該当しない。 第1 事案の概要:本件被告人に対し、簡易裁判所裁判官として逮捕状を発付した裁判官が、その後、地方裁判所判事として同一被告事件の第一審の審理および判決に関与した。弁…