本件公判調書は昭和二七年二月一日改正施行された刑訴規則四四条の規定に従い作成されたものであるから、同条の必要的記載事項以外の事項はその記載が省略されているのである。従つて起訴状の朗読及び刑訴二九一条二項の手続が行われた旨公判調書に記載がないのは両手続が適法に履践されたと推認すべきであり、ことに右両手続の行われなかつたことに対する被告人又は弁護人の異議の申立があつた形跡は記録上全然ないところからみても右両手続は現実に行われたものと推認するを相当とする。
公判調書に起訴状朗読及び刑訴法第二九一条第二項の手続の記載がない場合とその推認
刑訴法52条,刑訴規則44条
判旨
刑事訴訟規則44条の改正後において、起訴状の朗読及び権利告知の手続が公判調書に記載されていない場合であっても、特段の事情がない限り、これら手続は適法に履践されたものと推認される。
問題の所在(論点)
公判調書に起訴状の朗読(刑訴法291条1項)及び権利告知(同2項)の記載がない場合に、直ちにこれら手続が欠如していたものとして、公判手続が違法となるか。刑事訴訟規則44条による公判調書の簡素化と適法推定の成否が問題となる。
規範
刑事訴訟規則44条により公判調書の記載事項が限定されたことに鑑み、同条の必要的記載事項以外の事項(起訴状朗読や黙秘権告知等)について記載が省略されている場合、公判手続の適法性は、記録上の異議の有無等の諸状況から総合的に推認されるべきである。
重要事実
被告人が麻薬所持の罪に問われた事案において、第一審の公判調書には、刑事訴訟法291条1項の起訴状の朗読及び同条2項の権利告知の手続が行われた旨の記載が欠けていた。被告人側は、当該手続が履践されていないとして、手続の違法を主張し上告した。
あてはめ
昭和27年改正後の刑訴規則44条は公判調書の必要的記載事項を限定しており、起訴状朗読等は同条の記載事項に含まれていない。本件記録を確認すると、当該手続が行われなかったことに対して被告人や弁護人が異議を申し立てた形跡は全く認められない。したがって、必要的記載事項以外の事項については、記載がなくても適法に履践されたと推認するのが相当である。
結論
公判手続に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
公判調書の記載が不完全であっても、規則44条が定める必要的記載事項(各号列記)以外の事項であれば、消極的な状況(異議の不在等)から手続の履践を推認できる。答案上は、手続違背を主張する際の反論、あるいは手続の適法性を肯定する論拠として「推認」の法理を援用する。
事件番号: 昭和25(あ)2456 / 裁判年月日: 昭和27年3月25日 / 結論: 棄却
一 判決の証拠説明において証拠能力のない書面を挙げていても、それが他の証拠能力のある供述書に引用せられており、その内容を補足する趣旨のものに過ぎないときは、違法ではない。 二 右の場合、供述書の証拠調の方法としては、これを朗読する外引用せられた書面を朗読すれば足り、これを示す必要はない。