判旨
控訴裁判所は、訴訟記録及び第1審で取り調べた証拠のみによって直ちに判決することができると認める場合には、必ずしも新たな証拠を取り調べることなく破棄自判することが可能である。
問題の所在(論点)
1. 控訴裁判所が新たな証拠を取り調べずに破棄自判を行うことは、刑事訴訟法上許されるか。 2. 記録に基づく審理を行う控訴審の性質は、憲法37条の公開の原則に抵触するか。
規範
控訴審において破棄自判(刑事訴訟法400条但書)を行う際、訴訟記録及び第1審の証拠に基づき直ちに判決可能と認められるのであれば、必ずしも新たな証拠の取調べを要しない。また、控訴審が事後審的性格を有することから、公開の法廷で弁論の機会を与えている限り、書面審理中心の運用であっても憲法37条の公開原則には反しない。
重要事実
被告人A及びBの弁護人は、控訴裁判所が新たな証拠を取り調べることなく、訴訟記録のみに基づく「書面審理」によって破棄自判を行ったことに対し、刑事訴訟法違反および憲法37条(裁判の公開)違反を主張して上告した。また、公判調書に被告人が身体の拘束を受けていない旨の記載がないことをもって手続きの違法を主張した。
あてはめ
1. 控訴審は事後審としての性質を有しており、第1審の訴訟記録および取調べ済み証拠を精査した結果、直ちに判決を下せると判断される場合には、屋上屋を架すような新証拠の取調べは義務付けられない。本件原審も、これらの記録から判断可能と認めて自判したものであり適法である。 2. 原審は刑事訴訟法に従い、公開の公判において弁護人の控訴趣意の陳述および弁論を聴取している。審理の基礎が書面(記録)にあるとしても、手続自体が公開の法廷で実施されている以上、憲法の要求する公開の原則は充たされている。
結論
控訴審における記録のみによる破棄自判は適法であり、公開の法廷で弁論が行われている限り憲法37条にも違反しない。
実務上の射程
控訴審の事後審的性格を裏付ける判例であり、実務上、控訴審が独自に証拠調べを行わず、記録の再評価のみで1審判決を覆す際の手続的妥当性を基礎付けるものとして機能する。
事件番号: 昭和27(あ)4223 / 裁判年月日: 昭和31年7月18日 / 結論: 棄却
一 麻薬取締法(昭和二三年法律第一二三号)第一四条、第五九条の規程は憲法第三八条第一項に違反しない。 二 第一審判決が懲役刑の執行猶予を言い渡した場合に、控訴裁判所が何ら事実の取調をしないで、第一審判決を量刑不当として破棄し、自ら控訴記録および第一審で取り調べた証拠のみによつて、懲役刑(実刑)の言渡をしても、刑訴第四〇…