判旨
控訴審において、事実の取調べを行わず、訴訟記録および第一審で取調べた証拠のみに基づいて量刑不当を理由に一審判決を破棄自判することは、適法である。また、このような形式的な書面審理によって実刑を科すことは、憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」には当たらない。
問題の所在(論点)
控訴審において、事実取調べを行わず訴訟記録等の書面審理のみに基づいて、量刑不当を理由に一審判決を破棄自判し実刑を科すことが、刑事訴訟法および憲法36条(残虐な刑罰の禁止)に照らして許されるか。
規範
控訴審が量刑不当を理由として第一審判決を破棄し自ら判決(自判)する場合、必ずしも新たに事実の取調べを行う必要はない。訴訟記録および第一審で取調べ済みの証拠資料のみに基づき、書面審理によって判断を行うことは刑事訴訟法上適法である。また、手続の形式性が刑罰の内容を「残虐な刑罰」(憲法36条)に変質させるものではない。
重要事実
被告人が控訴したところ、原審(第二審)は、独自の事実取調べを行わず、第一審の訴訟記録および証拠のみを検討した。その結果、原審は第一審の量刑を不当として破棄し、被告人に対して実刑6月の判決を言い渡した(破棄自判)。これに対し被告人側が、書面審理のみで実刑を科すことは憲法36条に違反し、また手続的に違法であるとして上告した事案である。
あてはめ
控訴審は事後審的性格を有するものであるから、第一審で既に現れている証拠資料を再評価して量刑の適否を判断することは予定された予定された権限内にある。本件において、原審が新たな事実取調べを欠いたまま、第一審の記録に基づき量刑を不当と判断して実刑を科したとしても、それは適正な証拠に基づく判断であり、手続上の違法はない。また、刑罰の残虐性は刑罰の内容そのものから判断されるべきであり、判決に至る審理が書面中心であるという形式的事由をもって、科された実刑が憲法36条にいう「残虐な刑罰」に該当すると評価することはできない。
結論
控訴審が書面審理のみで量刑不当による破棄自判を行うことは適法であり、憲法36条にも違反しないため、上告を棄却する。
実務上の射程
控訴審の事後審的性格を確認する際や、自判における事実取調べの要否が問題となる場面で活用できる。特に量刑判断における控訴審の裁量と、書面審理による自判の限界(新証拠がない場合の判断の可否)を論じる際の基礎となる判例である。
事件番号: 昭和27(あ)4223 / 裁判年月日: 昭和31年7月18日 / 結論: 棄却
一 麻薬取締法(昭和二三年法律第一二三号)第一四条、第五九条の規程は憲法第三八条第一項に違反しない。 二 第一審判決が懲役刑の執行猶予を言い渡した場合に、控訴裁判所が何ら事実の取調をしないで、第一審判決を量刑不当として破棄し、自ら控訴記録および第一審で取り調べた証拠のみによつて、懲役刑(実刑)の言渡をしても、刑訴第四〇…