一 麻薬取締法(昭和二三年法律第一二三号)第一四条、第五九条の規程は憲法第三八条第一項に違反しない。 二 第一審判決が懲役刑の執行猶予を言い渡した場合に、控訴裁判所が何ら事実の取調をしないで、第一審判決を量刑不当として破棄し、自ら控訴記録および第一審で取り調べた証拠のみによつて、懲役刑(実刑)の言渡をしても、刑訴第四〇〇条但書に違反しない。 (裁判官栗山茂、同真野毅、同小谷勝重、同谷村唯一郎、同小林俊三の少数意見)原判決は、第一審が本件被告人に言渡した懲役二年執行猶予四年罰金四万円の判決を破棄自判し、右罰金刑とともに懲役八月を言い渡したのであるが、記録によれば、その手続は書面上の調査のみによつたのであつて、事実の取調を行つた形跡は認められない。このように第一審の執行猶予を附した判決を第二審において破棄し自判によつてこれを実刑に改めるには自ら事実の取調を行うことを要し、さもなければ第一審に差し戻すべきものである。この点において原判決は違法たるを免れないから破棄すべきものである。
一 麻薬取締法(昭和二三年法律第一二三号)第一四条第五九条の合憲性 二 懲役刑の執行猶予を言い渡した第一審判決を控訴審が書面審理のみにより破棄し自ら実刑の言渡をする場合と刑訴第四〇〇条但書
麻薬取締法(昭和23年法律123号)14条,麻薬取締法(昭和23年法律123号)59条,憲法38条1項,憲法31条,憲法37条,刑訴法400条,裁判所法11条
判旨
控訴審が量刑不当を理由に第一審判決を破棄し、自ら事実の取調をすることなく第一審より重い刑を言い渡すことは、訴訟記録及び第一審の証拠により不当性が認められる限り、刑事訴訟法400条但書に反しない。
問題の所在(論点)
控訴審が刑事訴訟法400条但書に基づき自判する場合において、独自の事実取調を行うことなく、第一審の証拠関係のみに基づいて第一審よりも重い刑を科すことが許されるか。
規範
控訴審が検察官の量刑不当の控訴趣意に基づき、第一審判決の量刑の当不当を審査するにあたっては、常に自ら事実の取調をしなければならないものではない。訴訟記録及び第一審において取り調べた証拠によって量刑の不当なことが認められるときは、自ら事実の取調をせずに、第一審判決の刑より重い刑を言い渡しても刑事訴訟法400条但書の解釈を誤ったものとはいえず、憲法37条の公平な裁判所の裁判を受ける権利を侵害するものでもない。
重要事実
麻薬取締法違反等の罪に問われた被告人に対し、第一審判決は懲役2年(執行猶予4年)及び罰金4万円を言い渡した。これに対し検察官が量刑不当を理由に控訴したところ、控訴審(原審)は事実の取調を行うことなく、訴訟記録等の審査のみに基づき、第一審判決を破棄して被告人に対し第一審より重い懲役8月(実刑)及び罰金4万円の刑を言い渡した。被告人側は、事実の取調なしに量刑を重く変更することは違憲・違法であるとして上告した。
あてはめ
本件において、控訴審は検察官の控訴趣意を受け、第一審の量刑が軽きに過ぎて不当であると判断した。この際、控訴審は新たな事実取調は行わなかったものの、第一審までに現れた訴訟記録や証拠を精査しており、それら客観的な資料に基づいて量刑の不当性を基礎づけている。このように、既出の証拠から量刑不当が明らかに認められる場合には、改めて証拠調べを行う必要はなく、その判断に基づく量刑の変更は適法な裁量権の範囲内といえる。したがって、実刑への変更を含め、第一審より重い刑を科した手続に違法はない。
結論
控訴審が独自の事実取調を行わず、第一審の記録のみに基づいて第一審より重い刑を言い渡すことは適法であり、憲法にも反しない。
実務上の射程
量刑不当を理由とする破棄自判において、控訴審に独自の事実取調が必須ではないことを示した射程の広い判例である。答案上は、控訴審の事後審的性格を裏付ける根拠として活用できる。ただし、実務上は「著しい量刑不当」が認められる場合に限られる点に留意が必要である。
事件番号: 昭和25(あ)1126 / 裁判年月日: 昭和27年9月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴裁判所は、訴訟記録および第一審の証拠に基づき直ちに判決できると認める場合には、量刑不当の主張に対しても、新たな事実審理や証拠調べを行うことなく直ちに自判することができる。 第1 事案の概要:被告人が量刑不当等を理由に控訴した事案において、控訴裁判所が特段の事実調べを行うことなく、第一審の記録と…