(裁判官河村大助の少数意見)原判決は第一審が本件被告人に対し罰金三万円(三百円を一日に換算)に処した判決を破棄自判し、懲役三月の実刑を言渡したのであるが、記録によれば、その手続は書面上の調査のもによつたのであつて、事実の取調を行つた形跡は認められない。このように第一審の罰金刑を第二審において破棄自判によつて、懲役刑の実刑に改めるには自ら事実の取調を行うことを要し、さもなければ第一審に差し戻すべきものである。この点において原判決は違法たるを免れないから破棄すべきものである。
罰金刑を言い渡した第一審判決を控訴審が書面審理のみにより破棄し自ら懲役刑の実刑の言渡をする場合相と刑訴法第四〇〇条但書。
刑訴法400条但書
判旨
控訴裁判所が、第一審判決の量刑不当を理由に自ら事実の取調べを行うことなく第一審判決を破棄し、第一審の罰金刑よりも重い懲役刑(実刑)を言い渡すことは適法である。
問題の所在(論点)
控訴裁判所が事実の取調べを行わずに、第一審判決の量刑不当を理由として破棄自判し、被告人に対しより重い刑(罰金刑から懲役刑)を言い渡すことの可否。
規範
控訴裁判所は、第一審判決の量刑が不当であると認める場合には、刑事訴訟法に基づき、自ら事実の取調べを行わなくとも、記録の精査等の書面上の調査により第一審判決を破棄自判し、より重い刑を言い渡すことができる(昭和31年7月18日大法廷判決参照)。
重要事実
被告人に対し罰金3万円を言い渡した第一審判決に対し、検察官が量刑不当を理由に控訴した。控訴審(原審)は、自ら事実の取調べを行うことなく、第一審判決を破棄した上で被告人を懲役3月の実刑に処した。これに対し弁護人は、事実の取調べをせずに罰金刑から懲役刑へと刑を重くすることは違憲・違法であるとして上告した。
あてはめ
判例(昭和31年大法廷判決等)によれば、控訴審が量刑の当否を判断するにあたり、必ずしも新たな事実の取調べを必要とするものではない。本件原審の措置は、検察官の控訴趣意に基づき、第一審の量刑を不当と判断して自ら判決を言い渡したものであり、書面上の調査のみによって刑種を重く変更することは、適正な手続として是認される。したがって、事実の取調べを行わなかった点に違法はなく、上告理由は前提を欠く。
結論
控訴裁判所が事実取調べをせずに第一審の罰金刑を破棄し、懲役刑を言い渡すことは適法であり、上告を棄却する。
実務上の射程
控訴審の事後審的性格を確認する判例である。量刑不当を理由とする破棄自判において、第一審の記録と証拠資料のみで判断が可能であれば、被告人に不利な刑への変更であっても改めて事実取調べを行う必要はない。答案上は、控訴審における破棄自判(刑訴法400条但書)の限界や量刑判断のプロセスを論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)4223 / 裁判年月日: 昭和31年7月18日 / 結論: 棄却
一 麻薬取締法(昭和二三年法律第一二三号)第一四条、第五九条の規程は憲法第三八条第一項に違反しない。 二 第一審判決が懲役刑の執行猶予を言い渡した場合に、控訴裁判所が何ら事実の取調をしないで、第一審判決を量刑不当として破棄し、自ら控訴記録および第一審で取り調べた証拠のみによつて、懲役刑(実刑)の言渡をしても、刑訴第四〇…