第一審判決が懲役刑の執行猶予を言い渡した場合に、控訴裁判所が何ら事実の取調をしないで、第一審判決を量刑不当として破棄し、みずから訴訟記録および第一審で取り調べた証拠のみによつて、懲役刑(実刑)の言渡をしても刑訴第四〇〇条但書に違反しない。(下飯坂裁判官も多数意見に賛成)
懲役刑の執行猶予を言い渡した第一審判決を控訴審が書面審理のみにより破棄し、みずから実刑の言渡をする場合と刑訴法第四〇〇条但書
刑訴法400条
判旨
控訴裁判所が第一審の有罪判決を破棄して被告人に有利な事実を認定する場合であっても、必ずしも自ら事実の取調べを行う必要はなく、刑訴法400条但書の規定はこれに反しない。
問題の所在(論点)
控訴裁判所が第一審判決を破棄し、または維持するにあたり、自ら事実の取調べを行わないことが、刑事訴訟法400条但書および憲法に違反するか。
規範
刑事訴訟法400条但書に基づき、控訴裁判所が第一審判決を破棄して直ちに自ら判決をする場合において、必ずしも常に控訴審において独自の事実取調べを行うことを要しない(昭和31年7月18日大法廷判決参照)。
重要事実
被告人AおよびBは、第一審において犯罪事実が認定され有罪判決を受けた。これに対し、被告人側は事実誤認等を理由に控訴し、さらに上告した。弁護人は、控訴裁判所が事実の取調べを行うことなく第一審判決を維持、あるいは変更することの違憲性・違法性を主張し、事実の取調べを行うか、さもなくば事件を第一審に差し戻すべきであると主張した。
あてはめ
最高裁は、先行する大法廷判決の趣旨を援用し、本件のように控訴審において独自の事実取調べを行わなかったとしても、刑訴法400条但書の趣旨に反するものではないと判断した。また、証拠の評価についても、第一審が依拠した供述のほか、他の証人による証言等を含めて総合的に判断されていることから、手続上の違法は認められないとした。
結論
控訴裁判所が自ら事実の取調べを行わずに判決を下すことは、刑事訴訟法400条但書に違反せず、合憲である。本件上告は棄却される。
実務上の射程
控訴審の事後審的性格を確認する判例である。答案上は、控訴審における事実認定のあり方や、破棄自判の要件(刑訴法400条)が問題となる場面で、実質的な証拠調べを欠いた判決の妥当性を基礎付ける際に引用できる。
事件番号: 昭和27(あ)4223 / 裁判年月日: 昭和31年7月18日 / 結論: 棄却
一 麻薬取締法(昭和二三年法律第一二三号)第一四条、第五九条の規程は憲法第三八条第一項に違反しない。 二 第一審判決が懲役刑の執行猶予を言い渡した場合に、控訴裁判所が何ら事実の取調をしないで、第一審判決を量刑不当として破棄し、自ら控訴記録および第一審で取り調べた証拠のみによつて、懲役刑(実刑)の言渡をしても、刑訴第四〇…