一 判決の証拠説明において証拠能力のない書面を挙げていても、それが他の証拠能力のある供述書に引用せられており、その内容を補足する趣旨のものに過ぎないときは、違法ではない。 二 右の場合、供述書の証拠調の方法としては、これを朗読する外引用せられた書面を朗読すれば足り、これを示す必要はない。
一 他の証拠能力ある供述書の内容を補足する趣旨で証拠能力のない書面を判決に引用した場合の適否 二 右の場合における供述書の証拠調の方法
刑訴法317条,刑訴法305条,刑訴法306条
判旨
独立の証拠能力を欠く証拠であっても、他の証拠能力ある書面の内容を補足する資料として利用することは許され、その証拠調べは朗読により行えば足りる。第一審において証拠能力のない資料を補足資料として朗読の手続を経た以上、原判決の法令解釈に誤りがあっても結論に影響しない。
問題の所在(論点)
証拠能力のない書面を、他の証拠能力ある書面の「内容を補足する資料」として用いることの可否、およびその場合の証拠調べの手続が問題となる。
規範
独立の証拠としてではなく、既に証拠能力が認められている他の書面(供述書等)の内容を補足する資料として利用する場合、当該資料自体に独立の証拠能力は不要である。この場合の証拠調べは、刑事訴訟法306条による検証等の手続を要せず、主たる証拠の証拠調べの方法として、刑事訴訟法305条の規定に準じ、当該資料を朗読することで足りる。
重要事実
被告人の検察事務官に対する供述書(証検13号)が証拠として提出された際、その内容を補足する趣旨で別の書面(証検11号)が併せて提出された。第一審判決は、証検11号を独立の証拠ではなく補足資料として扱ったが、原判決は、補足資料とする場合でも刑訴法306条に基づく証拠調べが必要であるとの解釈を示した。一方で、記録上、第一審では証検11号の朗読手続が実施されていた。
事件番号: 昭和24(れ)2777 / 裁判年月日: 昭和26年8月17日 / 結論: その他
一 原審第七回公判において原審は被告人Aに対する弁論を分離したことは所論のとおりである。そして第九回公判において被告人Aに対する弁論を終結したのであるが原審は右分離した事件を再び併合して判決したものであることは原判決前文において併合して判決すると判示していることから明らかである。裁判所は職権によつて弁論の分離併合が出来…
あてはめ
証検11号は、証拠能力のある証検13号(被告人の供述書)の内容を補足する目的で引用されており、独立した証拠として採用されたものではない。したがって、証検11号自体に証拠能力がなくても違法ではない。また、原判決は刑訴法306条の証拠調べが必要としたが、補足資料の性質に鑑みれば、刑訴法305条に準じた朗読で十分である。本件では、第一審において現に朗読の手続が採られているため、手続上の実質的な不備はないといえる。
結論
補足資料としての利用は適法であり、朗読手続が履行されている以上、原判決の解釈誤りは判決に影響を及ぼさないため、上告は棄却される。
実務上の射程
伝聞例外等の要件を満たさない書面であっても、他の証拠の証明力を補強・補足する「非伝聞」的利用や補足説明資料としての提出が可能であることを示唆する。答案上は、証拠調べ手続の適法性や、独立の証拠能力を要しない範囲を議論する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和28(あ)69 / 裁判年月日: 昭和29年3月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠能力のない証拠を他の証拠と総合して犯罪事実を認定する違法があっても、当該証拠を除外した他の証拠のみで犯罪事実を認定できる場合には、その違法は判決に影響を及ぼさない。 第1 事案の概要:第一審判決において、証拠として提出されていない証拠を犯罪事実認定の基礎とした(罪証に供した)という違法が主張さ…
事件番号: 昭和25(あ)1207 / 裁判年月日: 昭和26年5月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本決定は、刑事訴訟法405条の上告理由に当たらない場合に上告を棄却する判断を示したものである。 第1 事案の概要:被告人および弁護人が上告を申し立てた事案。具体的な公訴事実や下級審の判断内容については、本判決文(決定文)からは不明である。 第2 問題の所在(論点):被告人および弁護人が主張する上告…