判旨
被告人の供述調書の任意性を調査する目的で、当該調書の一部を公判廷で朗読することは、証拠調そのものには当たらないため、証拠能力の厳格な証明(刑訴法322条等)を経ずとも適法である。
問題の所在(論点)
供述調書の任意性を調査する過程で、その内容の一部を公判廷で朗読することが、刑訴法上の「証拠調」に該当し、先行して証拠能力の厳格な証明を必要とするか。
規範
供述調書の任意性の有無を調査する手続は、当該調書の内容を実質的な証拠(実質証拠)として採用するための前提条件を確認する附随的・予備的な手続である。したがって、任意性調査のために調書の一部を朗読することは、当該調書を独立した証拠として取り調べる「証拠調」には該当しない。
重要事実
第一審の第3回公判において、裁判所が被告人Aの供述調書のうち、特定の箇所を朗読した。弁護人はこれが不当な証拠調であると主張したが、実際には当該調書の任意性の有無を判断するための調査として行われたものであった。
あてはめ
本件において、第一審裁判所が被告人Aの供述調書の一部を朗読したのは、当該調書の任意性を調査する目的で行われたものである。これは、調書を実質証拠として採用して事実認定に用いるための手続ではなく、あくまで証拠能力の有無を判断するための手段にすぎない。ゆえに、この朗読行為自体をもって証拠調がなされたものと評価することはできない。
結論
本件の朗読は任意性調査のための行為であり、証拠調ではない。したがって、手続に違法はなく、上告理由にはあたらない。
実務上の射程
証拠能力の判断(自由な証明)に際し、裁判所がその内容に触れることの限界を示している。伝聞例外の要件(刑訴法321条以下)を具備するかを判断する際に、裁判官が内容を吟味することが不可避であることを肯定する判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)2456 / 裁判年月日: 昭和27年3月25日 / 結論: 棄却
一 判決の証拠説明において証拠能力のない書面を挙げていても、それが他の証拠能力のある供述書に引用せられており、その内容を補足する趣旨のものに過ぎないときは、違法ではない。 二 右の場合、供述書の証拠調の方法としては、これを朗読する外引用せられた書面を朗読すれば足り、これを示す必要はない。
事件番号: 昭和30(あ)1232 / 裁判年月日: 昭和30年10月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不利益な供述を強制された事跡が認められない場合、憲法38条1項違反の主張は前提を欠き、適法な上告理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人A及びBが被告人として起訴された事案において、被告人Aの弁護人は、自己に不利益な供述を強制されたとして憲法違反を理由に上告を申し立てた。しかし、裁判所が記録を…