判旨
控訴審において、事実の取調べを行わず書面審理のみに基づき、第一審の執行猶予判決を実刑に破棄自判することは、刑事訴訟法の規定に照らし許容される。
問題の所在(論点)
控訴審において、第一審の執行猶予判決を実刑に改める(被告人に不利益な破棄自判をする)際、改めて事実の取調べや被告人の意見聴取を行う必要があるか。
規範
控訴審は事後審的性格を有するものであるから、第一審判決の量刑が不当であることを理由に破棄自判する場合であっても、必ずしも改めて事実の取調べや被告人の意見陳述を直接聴取することを要しない。記録の精査(書面審理)に基づき、第一審の刑の執行猶予を維持することが不当であると判断できる場合には、その限度で自ら判決をすることができる。
重要事実
第一審判決が被告人に対して執行猶予を付したのに対し、第二審(控訴審)は事実の取調べや被告人の直接の意見弁解を聴取することなく、記録に基づく書面審理のみによって第一審判決を破棄し、被告人を実刑に処する自判を行った。被告人側は、このような手続は訴訟法違反であるとして上告した。
あてはめ
本件において、被告人側の主張は事実誤認や量刑不当を理由とするものであった。最高裁は、記録を調査しても刑訴法411条(上告審の職権破棄事由)を適用すべき重大な違法は認められないと判断した。これは、控訴審が書面審理のみで量刑を実刑に翻したとしても、その手続自体が直ちに違法となるわけではないことを前提としている。小林裁判官の少数意見は、不利益変更時には被告人の防御権保障の観点から意見聴取が必要と説くが、法廷の多数意見は現行法の書面審理中心の控訴審構造を是認した。
結論
控訴審が書面審理のみで第一審の執行猶予判決を破棄し、実刑の判決を言い渡すことは適法である。
実務上の射程
控訴審の事後審的性格を確認する判例である。答案上は、控訴審における事実取調べの任意性(刑訴法393条1項)を論じる際、不利益変更時であっても書面審理による破棄自判が可能であるという実務上の運用を支える論拠として機能する。
事件番号: 昭和30(あ)1984 / 裁判年月日: 昭和32年2月15日 / 結論: 棄却
第一審が懲役一五年を言い渡した場合に、控訴裁判所が何等事実の取調をしないで第一審判決の量刑を不当として破棄し、みずから訴訟記録および第一審で取り調べた証拠のみによつて無期懲役刑の言渡をしても刑訴第四〇〇条但書に違反しない。