判旨
共犯者のみが居住する建造物であっても、その実態からみて他の居住者が存在する場合には現住建造物放火罪が成立し、控訴審に判断遺脱の違法があっても、当該主張自体に理由がない場合は判決に影響を及ぼさず、破棄事由には当たらない。
問題の所在(論点)
1. 控訴審の判断遺脱が直ちに破棄事由となるか。2. 共犯者が居住する建造物であっても、他の者の居住実態がある場合に刑法108条が適用されるか。
規範
1. 現住建造物等放火罪(刑法108条)の「現に人が住居に使用」する建造物とは、犯人以外の者が居住のために使用しているものをいうが、共犯者のみが居住している場合であっても、客観的に他の者の居住実態が認められる限り同条が適用される。2. 控訴審が控訴趣意の一部について判断を遺脱した場合であっても、その主張自体が理由なきものであるときは、判決に影響を及ぼす違法(刑訴法411条1号等)とはならず、原判決を破棄しなくても著しく正義に反するとはいえない。
重要事実
被告人Bは、妻Cらと居住する住宅、および弟が起居する工場・作小屋に放火したとして、現住建造物等放火罪で起訴された。被告人側は、妻Cも共犯者であり、共犯者のみが居住する建造物への放火は非現住建造物等放火罪にとどまると主張した。控訴審において、弁護人はこの点を含む控訴趣意を申し立てたが、原判決は一部の主張について判断を示さないまま控訴を棄却した。
あてはめ
1. 判決文によれば、放火当時、住宅には被告人夫妻のみならず子供らが同居しており、現に長女が消火活動を行っていた。また、工場には被告人の弟が起居していた。したがって、仮に妻Cが共犯であったとしても、これら「犯人以外の者」の居住実態が認められる以上、刑法108条が適用されるべき事案である。2. 被告人が主張する「妻Cが共犯であるため非現住となる」との主張は、前提となる事実(Cの共犯性)が認められないだけでなく、仮に認められたとしても法律上理由がない。したがって、原審に判断遺脱の違法はあるものの、結論に影響を及ぼさないため、破棄の必要はないと解される。
結論
本件放火行為に刑法108条を適用した第1審の判断は正当であり、原判決に判断遺脱の違法があっても破棄を要しない。上告棄却。
実務上の射程
現住建造物等放火罪の「現住性」の判断において、共犯者以外の居住実態(家族等)があれば、一部の居住者が共犯であっても同罪が成立することを確認する際に用いる。また、刑事訴訟法上の判断遺脱の救済範囲(411条等の適用場面)に関する準則としても参照される。
事件番号: 昭和26(あ)2591 / 裁判年月日: 昭和28年7月7日 / 結論: 棄却
一 検事に対する相被告人の供述調書は、被告人の関係においては、刑訴第三二一条第一項第二号の書面としての証拠能力を有する。 二 所論昭和二五年三月一五日言渡の札幌高裁判決(当裁判所事務総局刑事局昭和二五年九月発行高等裁判所刑事判決特報六号一八五頁以下参照)及び昭和二五年七月一〇日言渡の同裁判所判決(高等裁判所判例集三巻二…
事件番号: 昭和43(あ)2552 / 裁判年月日: 昭和44年4月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯の成立に必要な共謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しない共謀者に共同正犯としての刑責を負わせることは、憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、いわゆる共謀共同正犯における共謀に参加した事実が認められるものの、当該犯罪の実行行為自体には直接関与していなかっ…
事件番号: 昭和53(あ)796 / 裁判年月日: 昭和53年9月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法328条に基づき提出された証拠は、犯罪事実を認定するための実質証拠として用いることはできず、これを証拠として採用していない以上、判決に違法はない。 第1 事案の概要:被告人は放火事件について、捜査段階での自白や証拠の採用方法に関し、憲法違反や判例違反を主張して上告した。特に、刑訴法328…