刑法第一〇八条にいう「人」とは、犯人以外の者を指称する。
刑法第一〇八条にいう「人」の意義
刑法108条
判旨
刑法108条の現住建造物等放火罪にいう「人」とは、犯人以外の者を指す。したがって、犯人以外の者が現に住居に使用し、または現に人がいる建造物を焼損させた場合には同罪が成立する。
問題の所在(論点)
刑法108条(現住建造物等放火罪)の構成要件である「現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物」における「人」に、犯人は含まれるか。また、共同正犯の一人がその建造物の居住者である場合、同条の成否に影響するか。
規範
刑法108条にいう「人」とは、犯人以外の者を指称する。したがって、犯人自身が当該建造物を使用していたとしても、犯人以外の者が現に住居に使用しているか、または現に人がいる場合には、同条の現住建造物等放火罪が成立する。
重要事実
被告人らは、A等の住居に使用する住宅およびこれに接続する工場を焼損させた。弁護側は、Aも不作為の放火犯(共犯)であり、犯人以外の者が住居に使用する建造物には当たらないため、刑法108条は適用されないと主張した。しかし、第一審および原審は、Aを共犯とは認めず、当該建造物にはAのほかにB、C、Dらが現に住居として使用していた事実を認定した。
事件番号: 昭和28(あ)5153 / 裁判年月日: 昭和30年11月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者のみが居住する建造物であっても、その実態からみて他の居住者が存在する場合には現住建造物放火罪が成立し、控訴審に判断遺脱の違法があっても、当該主張自体に理由がない場合は判決に影響を及ぼさず、破棄事由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人Bは、妻Cらと居住する住宅、および弟が起居する工場・作…
あてはめ
刑法108条の趣旨は、人の生命・身体の安全を保護することにある。そのため、同条の「人」からは犯人自身を除外すべきであるが、犯人以外の者が一人でも当該建造物を住居として使用していれば足りる。本件において、被告人らが焼損させた住宅には、共犯者ではないB、C、Dらが現に居住していたことが明らかである。したがって、仮にAが放火に関与していたとしても、犯人以外の者が居住する建造物を焼損させた事実に変わりはなく、公共の危険のみならず、特定の個人の生命・身体に対する危険が生じているといえる。
結論
刑法108条にいう「人」とは犯人以外の者を指す。犯人以外の者が現に居住する本件建造物を焼燬した所為は、同条の現住建造物等放火罪に該当する。
実務上の射程
現住建造物等放火罪と非現住建造物等放火罪(109条)の区別基準を示す基本判例である。答案上は、犯人自身が居住している物件であっても、家族など「犯人以外の者」が一人でも居住していれば108条が適用されることを論証する際に使用する。なお、本判決は「不作為の放火犯」の成否についても触れているが、本件では事実認定の問題として否定されている。
事件番号: 昭和26(あ)2591 / 裁判年月日: 昭和28年7月7日 / 結論: 棄却
一 検事に対する相被告人の供述調書は、被告人の関係においては、刑訴第三二一条第一項第二号の書面としての証拠能力を有する。 二 所論昭和二五年三月一五日言渡の札幌高裁判決(当裁判所事務総局刑事局昭和二五年九月発行高等裁判所刑事判決特報六号一八五頁以下参照)及び昭和二五年七月一〇日言渡の同裁判所判決(高等裁判所判例集三巻二…
事件番号: 平成8(あ)1154 / 裁判年月日: 平成9年10月21日 / 結論: 棄却
競売手続の妨害目的で自己の経営する会社の従業員を交替で泊まり込ませていた家屋につき放火を実行する前に右従業員らを旅行に連れ出していても、同家屋に日常生活上必要な設備、備品があり、従業員らが犯行前の約一箇月半の間に十数回交替で宿泊し、旅行から帰れば再び交替で宿泊するものと認識していたなど判示の事実関係の下においては、右家…
事件番号: 昭和43(あ)2552 / 裁判年月日: 昭和44年4月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯の成立に必要な共謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しない共謀者に共同正犯としての刑責を負わせることは、憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、いわゆる共謀共同正犯における共謀に参加した事実が認められるものの、当該犯罪の実行行為自体には直接関与していなかっ…