判旨
判決に無用の法令適用(刑法14条)の誤りがあっても、それが刑の加重等の実質的な不利益をもたらさない場合には、原判決を破棄すべき理由とはならない。
問題の所在(論点)
第一審判決において、本来適用すべきでない法令(刑法14条)が適用されていた場合、その誤りが直ちに判決の破棄事由となるか。
規範
法令適用の誤りがあっても、それが判決に影響を及ぼさない無用の適条である場合、すなわち刑の加重などの実質的な処断上の不利益が生じていない場合には、当該誤りは第一審判決を破棄すべき理由(刑訴法397条1項、405条等)には当たらない。
重要事実
被告人Aは窃盗および贓物故買の罪に問われた。第一審判決は、これらの罪に対して刑法14条(併合罪の加重等に関する規定)を適用したが、原審(二審)は職権調査の結果、この適用は「無用の適条」であり、実際に刑が加重されたわけではないと判断した。被告人側は、この法令適用の誤りを理由に上告した。
あてはめ
本件では、第一審が刑法14条を適用したことは誤りであったが、その結果として加重された刑をもって処断されたわけではない。このように、形式的な法令適用の誤りがあったとしても、実質的な量刑や結論に影響を与えていない場合には、判決を破棄して是正する必要性はないと解される。
結論
本件の法令適用の誤りは無用の適条にすぎず、判決を破棄すべき理由には当たらないため、上告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟において法令適用の誤りを主張する際、それが「判決に影響を及ぼすこと」が必要であるという実務上の原則を確認するものである。答案上では、軽微な手続違背や不要な条文引用が直ちに違法な判決とならないことの根拠として利用できる。
事件番号: 昭和28(あ)4391 / 裁判年月日: 昭和30年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】窃盗罪の判示において、盗品が「財物」であることを示すのに必要な品目および数量を記載すれば足り、その評価額を記載する必要はない。また、控訴審が事実確定に影響しない理由で自判する場合、第一審が確定した事実をそのまま引用して法令を適用することができる。 第1 事案の概要:被告人は窃盗罪(刑法235条、6…
事件番号: 昭和26(あ)1045 / 裁判年月日: 昭和28年1月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において犯情が第1審よりも軽く認定された場合であっても、宣告された量刑自体が重く変更されていない限り、不利益変更禁止の原則(刑訴法402条)に抵触するなどの違法は存在しない。 第1 事案の概要:被告人A、B、Cらが控訴した事件において、被告人Cは、原審(控訴審)において第1審よりも犯情が軽く…
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一 第一審判決に、併合罪の刑の加重をするにあたり刑法一四条を適用しなかつた違法があつても、被告人に対するその宣告刑が正当な処断刑の範囲内にあり、かつ、被告人の犯罪事実の内容その他情状に徴し右宣告刑が重きに過ぎるものと認められないときは、右違法が判決に影響を及ぼすこと明らかであるとはいえない。 二 第一審第九回公判調書中…