第一審判決の認定した六つの犯罪事実中第一乃至第四の所為は罰金等臨時措置法施行期日前の行為であるから、新旧両法の定める罰金刑を比照した上、軽い旧法を適用すべきであるにかかわらず、第一審判決が重い新法を適用して処断したのは違法たるを免れない。しかし前記六つの犯罪の中前の四つにつき旧法を適用するとしても、後の二つについては新法が適用されるのであるから、被告人に科せらるべき罰金は、刑法四八条二項により、各罪につき定めた罰金の合算額即ち十万四千円以下において処断せられることとなる。しかるに第一審判決及びこれを維持した原判決は被告人を罰金五千円に処したのであるから、これは本件犯情に照らして刑の量定が甚だしく不当であるとは言えず、刑訴四一一条により原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。
法令の適用の誤りがあつても刑訴法第四一一条に当らない一事例
罰金等臨時措置法2条,罰金等臨時措置法3条,刑法48条2項,刑訴法411条
判旨
法令の適用に誤りがある場合であっても、正しい法令を適用した際の法定刑の範囲内に実際の宣告刑が収まっており、量刑が著しく不当でないときは、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない。
問題の所在(論点)
判決に法令の適用の誤りがある場合において、その誤りが直ちに刑訴法411条による破棄理由となるか。特に、誤った法適用による処断刑の範囲内であっても、正しい法適用による処断刑の範囲にも収まっている場合の判断基準が問題となる。
規範
上告審において原判決に法令適用の誤り(刑訴法411条1号)が認められる場合であっても、正しい法令を適用して導き出される処断刑の範囲内において宣告刑が決定されており、かつ、当該宣告刑が犯情に照らして甚だしく不当でないときは、原判決を破棄しなければ「著しく正義に反する」(同条柱書)とは認められない。
重要事実
被告人は計6つの犯罪事実につき起訴された。第1ないし第4の事実は罰金等臨時措置法の施行前(旧法下)の行為であったが、第一審および控訴審は、全事実に対して重い新法を適用した。しかし、実際の宣告刑は罰金5,000円であった。正しく法を適用した場合、旧法下の4罪と新法下の2罪につき刑法48条2項により併合罪として処断される結果、罰金の合計額(最高限度)は10万4,000円となる事案であった。
あてはめ
本件では第1ないし第4の罪につき軽い旧法を適用すべきところ、重い新法を適用した法令適用の違法がある。しかし、正しい法(旧法および新法)を適用して併合罪として計算すると、処断刑の上限は10万4,000円となる。これに対し、原判決が維持した宣告刑は罰金5,000円にとどまっており、正しい処断刑の範囲内に十分収まっている。したがって、この量刑が犯情に照らして甚だしく不当であるとはいえない。
結論
原判決に法令適用の誤りは認められるが、宣告刑が正当な処断刑の範囲内であり不当とはいえない以上、破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められないため、上告を棄却する。
実務上の射程
刑訴法411条の職権破棄事由の解釈において、形式的な法令違反があっても実質的な妥当性が保たれている場合には、訴訟経済の観点から破棄を制限する運用を示す。司法試験では、法の適用誤りがある事例で、結論(量刑)の妥当性を検討する際の事後的な救済の限界を示す論拠として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)4516 / 裁判年月日: 昭和28年4月14日 / 結論: 棄却
原審が控訴趣意中の事実誤認の主張部分に対し、何等の判断を与えなかつたのは違法であると前提して、原判決の憲法違反を主張するものであるが、原判決を検討するに原審は明かに、第一審判決の事実認定を是認することにより、右の如き事実誤認の主張に対しても判断を与えているわけであり、特に原審は、量刑不当を理由として第一審判決を破棄自判…