判旨
第一審判決が再犯を三犯と誤認して累犯規定(刑法59条等)を適用した法令適用の誤りがあっても、それが直ちに判決に影響を及ぼすべき明らかな誤りとはいえず、控訴棄却を維持した原判決に違法はない。
問題の所在(論点)
第一審判決が累犯の回数(再犯か三犯か)を誤認して法令を適用した場合に、当該誤りが直ちに刑訴法上の判決破棄理由(判決に影響を及ぼすべき法令違反)となるか。
規範
第一審判決に法令適用の誤りがある場合であっても、刑事訴訟法上の破棄理由となるためには、その誤りが「判決に影響を及ぼすことが明らか」であることを要する(刑訴法379条、380条、411条1号参照)。累犯の回数認定の誤りであっても、刑の量定の範囲等に照らし、判決の結果に実質的な影響を与えないと認められる場合には、判決を破棄すべき理由にはならない。
重要事実
被告人の前科に関し、第一審判決は本来「再犯」として処罰すべき事案を「三犯」と認定した。その上で、刑法59条(累犯加重)を適用して刑を言い渡した。控訴審(原判決)は、この第一審の認定が誤りであることを認めつつも、その違法は「判決に影響を及ぼすことが明らか」なものとはいえないとして、第一審判決を破棄せず控訴を棄却した。弁護人は、大審院時代の判例を引き合いに、累犯の誤認は常に判決破棄の理由となるべきであるとして上告した。
あてはめ
旧々刑事訴訟法下の大審院判例では累犯認定の誤りを一律に破棄理由としていたが、現行法(新刑訴法)下では上告・控訴の理由が異なり、その適切性は限定的である。本件において、原判決は第一審の累犯規定適用の誤りを認めつつも、記録及び諸般の事情に照らし、当該認定の誤りが刑の量定などの結論に実質的な影響を与えていないと判断した。この判断は、最高裁が示す「法令適用の誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかでない」とする基準に合致しており、是認できる。
結論
第一審における累犯回数の誤認という法令適用の誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかでない以上、原判決が控訴を棄却したことは正当であり、本件上告は棄却される。
実務上の射程
法令違反が認められる場合でも、形式的な誤りにとどまり、具体的量刑や結論に影響を及ぼさない場合には、刑訴法上の破棄理由とならないことを示す事例である。司法試験等の実務的答案においては、訴訟法上の「判決に影響を及ぼすべき法令違反」の有無を検討する際の当てはめ材料として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)4516 / 裁判年月日: 昭和28年4月14日 / 結論: 棄却
原審が控訴趣意中の事実誤認の主張部分に対し、何等の判断を与えなかつたのは違法であると前提して、原判決の憲法違反を主張するものであるが、原判決を検討するに原審は明かに、第一審判決の事実認定を是認することにより、右の如き事実誤認の主張に対しても判断を与えているわけであり、特に原審は、量刑不当を理由として第一審判決を破棄自判…