原判決が第一審判決の量刑を不当とする控訴を理由ありとして原判決を破棄しながら同判決の刑と同一の刑を言い渡したのは、理由齟齬の違法あるを免れないが、未だ刑訴第四一一条を適用しなければならない場合とは認められない。
刑訴第四一一条にあたらない一事例―判決の理由にくいちがいがある場合
刑訴法381条,刑訴法397条,刑訴法400条,刑訴法411条,刑訴規則246条
判旨
控訴審が第一審の量刑を不当として破棄しながら、結果として第一審と同一の刑を言い渡した判決には理由齟齬の違法があるが、それのみでは直ちに刑訴法411条により破棄すべき著しく正義に反する場合に当たるとは限らない。
問題の所在(論点)
控訴審が「第一審の量刑は不当」として判決を破棄したにもかかわらず、第一審と同一の刑を言い渡した場合、判決に理由の齟齬(矛盾)があるといえるか。また、その違法は上告審で破棄されるべき事由に当たるか。
規範
控訴審判決に理由の矛盾(理由齟齬)がある場合であっても、上告審が職権により原判決を破棄(刑訴法411条)するためには、その違法が「著しく正義に反するもの」と認められる必要がある。
重要事実
第一審判決の量刑を不当とする控訴が提起された際、原審(控訴審)は当該控訴を理由ありとして第一審判決を破棄した。しかし、原審が自ら言い渡した刑は、破棄したはずの第一審判決の刑と同一であった。これに対し、弁護人は訴訟法違反等を理由に上告した。
あてはめ
原審の判断枠組みにおいて、第一審の量刑を不当として破棄しながら、結論においてそれと同一の刑を科すことは、論理的一貫性を欠き理由齟齬の違法があるといえる。しかし、本件においては、かかる違法があるとしても、判決の結果や事案の性質に照らし、刑訴法411条を適用して原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない。
結論
原判決には理由齟齬の違法があるが、著しく正義に反するものとは認められないため、上告は棄却される。
実務上の射程
判決理由の不備や矛盾(理由不備・理由齟齬)が刑訴法378条4号の控訴理由となるのと同様に、上告審でも違法として指摘し得る。もっとも、上告審において職権破棄事由(411条)として認められるためには、単なる論理的矛盾を超えて、判決の結果が正義に反するほどの重大な影響を及ぼしている必要があることを示唆している。
事件番号: 昭和26(あ)4004 / 裁判年月日: 昭和28年4月14日 / 結論: 棄却
第一審判決の認定した六つの犯罪事実中第一乃至第四の所為は罰金等臨時措置法施行期日前の行為であるから、新旧両法の定める罰金刑を比照した上、軽い旧法を適用すべきであるにかかわらず、第一審判決が重い新法を適用して処断したのは違法たるを免れない。しかし前記六つの犯罪の中前の四つにつき旧法を適用するとしても、後の二つについては新…