判旨
控訴審において主張せず、その判断を経ていない法令違反や事実誤認の事由を、上告審において新たに上告理由として主張することはできない。
問題の所在(論点)
控訴審で主張されなかった「法令の違反」や「事実の誤認」という新たな事由を、上告審において適法な上告理由として主張することができるか(刑事訴訟法における上告理由の制限)。
規範
上告審は事後審としての性質を有することから、原則として控訴審判決(原判決)における判断の当否を審査するものである。したがって、控訴審において適法に主張されず、かつ原判決の判断を経ていない事項については、これを上告理由とすることはできない。
重要事実
被告人の原審弁護人は、第一審判決に対し刑の量定が不当であることを理由として控訴を申し立てた。しかし、上告審に至り、弁護人は新たに訴訟手続の法令違反および事実の誤認があり、それが判決に影響を及ぼすことが明らかである旨を上告趣意として主張した。
あてはめ
本件において、原審弁護人が提出した控訴趣意書には量刑不当の主張のみが記載されており、所論の法令違反や事実誤認については一切主張されていない。そのため、これらの事由は原判決の判断対象となっていない。上告審において初めて持ち出されたこれらの主張は、原判決に対する適法な攻撃防御の範囲を超えており、事後審構造に照らして上告理由として採用し得ない。また、本件には職権調査を要する刑訴法411条の適用事由も認められない。
結論
控訴審で判断を経ていない事由は上告理由とならないため、本件上告は棄却される。
実務上の射程
上告審における「主張制限」の原則を示すものである。答案上は、控訴審の審判対象外であった事項を上告審で争おうとする場面で、上告受理の要件や上告理由の適格性を論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)4557 / 裁判年月日: 昭和28年6月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴趣意書に包含されず、かつ原審が判断していない事項について第一審判決の違法を前提として違憲を主張することは、刑訴法405条の上告理由に当たらない。 第1 事案の概要:被告人の弁護人は、上告趣意として以下の3点を主張した。第一点は単なる訴訟法違反、第二点は原審(控訴審)の控訴趣意書には含まれず、原…