原審が控訴趣意中の事実誤認の主張部分に対し、何等の判断を与えなかつたのは違法であると前提して、原判決の憲法違反を主張するものであるが、原判決を検討するに原審は明かに、第一審判決の事実認定を是認することにより、右の如き事実誤認の主張に対しても判断を与えているわけであり、特に原審は、量刑不当を理由として第一審判決を破棄自判し、第一審判決認定の事実を基礎として、新たに刑の量定をしている程であるから、原判決には所論の如く、事実誤認の主張に対し判断を遺脱した違法はない。
原審が第一審判決を量刑不当を理由として破棄自判をした場合、事実誤認の主張に対し特に判断しなければならないか
刑訴法392条,刑訴法381条,刑訴法382条,刑訴規則246条
判旨
控訴審判決が第一審の事実認定を前提として破棄自判した場合、明示的な説示がなくとも、第一審の事実認定を是認したと解されるため、事実誤認の主張に対する判断遺脱はない。
問題の所在(論点)
控訴審において事実誤認の主張がなされた際、判決文中で第一審の事実認定を基礎に量刑判断を行っている場合、事実誤認の主張に対する判断遺脱があるといえるか(刑事訴訟法の訴訟手続の適法性)。
規範
控訴審判決が第一審判決の事実認定を基礎として判断を行っている場合、たとえ事実誤認の主張に対して個別に詳細な排斥理由を述べなくとも、実質的に第一審の認定を是認したものと解され、判断遺脱の違法(刑事訴訟法等の解釈上の不備)は認められない。
重要事実
被告人が控訴において事実誤認を主張したが、控訴審は量刑不当を理由に第一審判決を破棄し、自ら判決を下した(破棄自判)。その際、控訴審は第一審判決が認定した事実をそのまま基礎として刑の量定を行っていた。弁護人は、控訴審が事実誤認の主張に対して明示的な判断を示さなかったことが憲法違反(または判断遺脱)に当たると主張して上告した。
あてはめ
本件において、原審(控訴審)は量刑不当を理由に破棄自判しているが、その判断の前提として第一審判決の認定事実を基礎としている。これは、客観的に見て第一審判決の事実認定を是認したものといえる。したがって、被告人が提起した事実誤認の主張に対しても、実質的には判断が与えられていると評価できる。
結論
原判決に事実誤認の主張に対する判断遺脱の違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
控訴審の判決書における理由不備や判断遺脱の存否を論ずる際、判決全体の文脈から推認される事実認定の是認を肯定する判例として、手続的瑕疵の主張を排斥する文脈で使用できる。
事件番号: 昭和27(あ)1088 / 裁判年月日: 昭和28年7月22日 / 結論: 棄却
原判決は、第一審判決中被告人に関する部分を破棄した上、新たに証拠説明をやり直しているから、自ら事実認定をして第一審判決の摘示事実を引用した趣旨と解される。従つて原判決には所論のように理由を附しないという違法はない。