控訴審が第一審判決の事実認定について触れるところなく或はこれを是認しつつ他の理由によりこれを破棄する場合は改めて認定事実を判決に判示するを要しない
控訴審が第一審判決の事実認定を是認し他の理由によりこれを破棄する場合と該事実判示の要否
刑訴法397条,刑訴法400条,刑訴法335条(404条)
判旨
控訴審が第1審判決を破棄自判する場合、第1審の事実認定を是認しつつ他の理由で破棄するのであれば、改めて判決書に認定事実を判示することを要しない。
問題の所在(論点)
控訴審が刑事訴訟法400条但書に基づき破棄自判を行う際、第1審判決の事実認定を是認している場合であっても、改めて判決書に犯罪事実等の認定を記載する必要があるか。
規範
控訴審が第1審判決の量刑不当や法令適用の誤りを理由として破棄自判(刑事訴訟法400条但書)するにあたっては、第1審判決が認定した事実に対して法令の適用を示せば足りる。したがって、控訴審が第1審の事実認定について触れないか、あるいはこれを是認しつつ他の理由により破棄する場合には、控訴審として改めて事実を認定・判示する必要はない。
重要事実
被告人が控訴した事案において、原審(控訴審)は、第1審判決に事実誤認も量刑不当もないと判断した。しかし、訴訟費用の負担を命じた部分に理由不備があることを理由として、第1審判決を破棄した。その上で、原審は第1審が認定した事実を前提に、第1審と同一の擬律(法令適用)および量刑を行い、訴訟費用の負担についてのみ第1審と異なる主文を言い渡した。これに対し、被告人側は、控訴審が自ら事実を判示しなかった手続の違法を主張して上告した。
あてはめ
本件において、原審は第1審判決の事実認定および量刑を妥当と認めており、破棄の理由は訴訟費用の負担に関する形式的な不備(理由不備)に限定されていた。このような場合、実体的な犯罪事実の認定については第1審判決を援用・是認していることが明白である。原審は、第1審の認定事実にそのまま法令を適用し、不備のあった訴訟費用の点のみを修正して自判している。かかる手続は、既に判示されている事実に基づく法令適用の示置として十分であり、改めて事実を重ねて判示しなかったとしても、被告人の防禦や裁判の適正を害するものではない。
結論
控訴審が第1審の事実認定を前提に他の理由で破棄自判する場合、改めて事実を判示しなくても手続上の違法はなく、憲法31条にも違反しない。
実務上の射程
刑事訴訟法上の破棄自判における事実適示の要否に関する射程を示す。控訴審の事後審的性格に基づき、第1審の事実認定に異同がない場合の判決書作成の実務的負担を軽減する法理として機能する。答案上は、控訴審判決の形式的妥当性が問われる場面で、実体的判断(事実認定)に変化がない場合の判示省略の可否について本判例を引用できる。
事件番号: 昭和26(あ)4516 / 裁判年月日: 昭和28年4月14日 / 結論: 棄却
原審が控訴趣意中の事実誤認の主張部分に対し、何等の判断を与えなかつたのは違法であると前提して、原判決の憲法違反を主張するものであるが、原判決を検討するに原審は明かに、第一審判決の事実認定を是認することにより、右の如き事実誤認の主張に対しても判断を与えているわけであり、特に原審は、量刑不当を理由として第一審判決を破棄自判…